政府は脱炭素に向け、水素の導入量を2040年に現状の6倍の1200万トンにする目標を検討すると報じられている。日本での水素燃料導入の課題は、国産、輸入を併せて、基本的に製造量が極めて少ない一方、価格が既存燃料に比べて非常に高いことだ。いまは水素の供給価格は1立方メートルあたり100円で、既存燃料の最大12倍に相当する。価格差を縮めるよう政府が補助するとしても、競争力がついて消費が増えるほどの補助はまず無理だろう。
現状の供給量は年200万トンにとどまる。過半は石油精製のために使われ、脱炭素のエネルギーとしての活用はこれから本格的に増やしていく。また、その水素製造に炭酸ガスの排出が伴うものが大半だから、これから再エネ電力による水の電気分解で水素を製造しなければ脱炭素にはならない。
二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭由来のコークスの代替が電気のみでは難しい製鉄は、水素の活用が有望視されている。水素を使った鉄鋼の量産をスウェーデンの大手SSABが26年にも始める。独メルセデス・ベンツなどに供給する。
国内ではこの技術が確立していない。日本製鉄やJFEスチールはそれぞれの拠点に試験炉を建設し24~25年度に試験を始める段階にある。50年までの導入を目指すが、水素製鉄を含めた鉄鋼業界全体の脱炭素化には10兆円規模の投資が必要になる。JERAは火力発電所の燃料の液化天然ガス(LNG)に水素を混焼させる技術に取り組む。27年度から実証実験を始めるが、本格導入は30年代になるとみられている。水素が燃料の燃料電池車(FCV)は普及が進んでいない。力を入れるトヨタ自動車のFCVの販売台数は22年に世界で4000台ほどと、電気自動車(EV)の6分の1程度。水素を供給するインフラが十分でないことなどが響いている。
米欧も水素の導入拡大を政府が後押しする。EUは20年に水素戦略をまとめた。30年までに水を電気分解して水素をつくる装置の製造能力を4000万キロワットまで伸ばす目標を掲げる。欧米では太陽光・風力発電の稼働が急増したが、日本では、太陽光が世界に先行したが息切れし、風力は遙かに引き離されている。したがって、国内で設置された再エネ電源による水素製造の量は限定されている。水素の消費量の大半は輸入となるのは確実だから、発電用燃料の海外依存度がさらに高まる可能性もある。
マッキンゼーがまとめたリポートによると、日本の水素コストは50年時点で1キログラムあたり2.85ドルとなる見通しで、米国の2.3倍、欧州の1.65ドルや中国の1.85ドルよりも高い。環境に配慮した水素のコスト低減には再エネの導入拡大が欠かせない。官民で15兆円という投資で水素技術の開発を急ぎつつ、国内の再エネ導入を加速する両方の取り組みが重要になる。加速がどの程度できるかは、今後の洋上風力発電の拡大テンポが鍵となる。洋上風力の出力変動抑制に水素製造を利用して、どれほどの水素を自給できるかも課題となる。
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