日本の商社が、世界の天然ガス市場でLNG(液化天然ガス)を生産するプロジェクトをつぎつぎに立ち上げています。これから増加する天然ガス火力発電や分散型電源システムへ供給するために、ほぼ全量に近い天然ガスをLNGとして輸入する日本にとっても安心感を与えるものだと感じています。
三菱商事がイラクにLNG基地を建設し、伊藤忠が米国のシェールガスを確保して液化し、日本にも供給するとつい最近発表しています。
イラクのプロジェクトは、ロンドンで仕事をしていた頃のことを思い出させてくれました。中東産油国は天然ガスの産出量も多いのですが、どうして欧州が輸入しないのかと専門家に尋ねたことがあります。その答えは、確かに天然ガスはあるが、それをパイプラインで欧州に供給するとすれば、必ず政情が不安定な国を通さなければならず、安定供給を確保する観点からしたリスクが大きすぎて実現は難しい、というものでした。今でもこの政情不安はあるのですが、LNGとしてイラクから直接輸出すれば、少なくともパイプラインを他の国に敷設する必要はないので、イラクと日本他、アジア諸国への輸送ルートの確保ができれば良いことになります。イラクへの経済貢献にもなります。ここの天然ガスは、石油生産に伴って産出するメタンで、現在はほとんどがただフレアースタックで燃やされているのです。それを回収して天然ガスや液化石油ガス(LPG)にするのは、分離精製プラントを建設する必要があります。
伊藤忠のプロジェクトは、米国産のガスですから、日米関係からみれば大きな不安はないように見えますが、米国政府がエネルギーの輸出を認可するかどうか、という問題はあります。カナダも日本向けにLNG輸出する意向を示していますから、競合プロジェクトとして認可にも障害はないのかもしれませんが、政治的な取引に利用される可能性もあるかなとも思います。