京セラは従来よりも原材料費を約3割減らせる次世代型リチウムイオン電池を開発したと報じられている。年内に大阪府内の工場に試験ラインを設け、早ければ2020年度中に住宅や工場向けの蓄電池の量産に乗り出すとのこと。固定価格買取制度(FIT)が家庭用太陽光発電に適用されてから10年の期間がこの11月から終了するものが40万件以上出てくるが、その電力を新たに電力事業者に買い取って貰う他に、自分で蓄電し、電気料金を下げようとする需要もある。しかし、それには蓄電池コストがまだ高すぎる現状では、その普及には壁がある。コストが下がり、同時に安定性、安全性に対する不安が解消されれば、長期的には蓄電池の利用は拡大するだろう。住宅向けで一般的な蓄電池の価格は約100万円かかる。現在は蓄電池を導入して太陽光パネルでつくった電力を自家消費しても、電力料金の削減で投資を回収するのは難しい。
リチウムイオン電池はプラスとマイナスの電極の間をリチウムイオンが行き来することで充放電する。従来は電極の間を電解液で満たしていたが、京セラは電解液を電極に練り込んで粘土状にする技術を開発した。電池内部の電極の層の数を少なくでき、電極を仕切るセパレーターや集電体も少なくて済むため原材料費を従来型よりも約3割減らすことに成功している。
そのコストダウンも関係しているのだろうが、京セラは太陽光パネルや蓄電池を、初期費用を払わずに設置できる一般家庭向けの新サービスを始めている。東京電力や関西電力との共同事業で始めているが、蓄電池だけの設置もできるために、新設の太陽光発電であっても、電力を全て自家消費する消費者も増えてくるだろう。これからいろいろな形態のエネルギービジネスが生まれてくる時代に入ったようだ。