効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■岩谷産業が米国の水素充填ステーション事業へ

岩谷産業が米国で燃料電池車(FCV)向け水素ステーション事業に参入するということだ。独産業ガス大手メッサー・グループがカリフォルニア州に持つ水素ステーション4カ所を買収し、日本企業で初めて運営を始めるが、数年後には20カ所程度に広げる計画。カリフォルニア州では昨年末時点でトヨタ自動車の「ミライ」を中心に約5700台のFCVが走る。自動車メーカーの促進策で水素の充填が一定額まで無料となっており、FCVが普及し始めている。トヨタは大型のFCトラックを運行する実験を実施している。同州では燃料電池で動く港湾車両の計画もある。一方、同州の水素ステーションの拠点数は40カ所ほどと日本の4割にとどまるため、ここに商機があると判断したようだ。ただ、FCVは電気自動車との競合では、電池の性能の向上と価格の低下が大きく、どこまで普及が進むかは不透明であるように思う。その意味では、バス、港湾車両の燃料電池化の方が進展するかもしれない。蓄電池では重量が大きくなりすぎるし、容量の大きい蓄電池の場合にはどうしても充電時間の長さが不利になるからだ。米国での水素ステーション事業については、日本企業では英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが運営するステーションにトヨタとホンダが資金支援しているが、自社参入としては初めて。なお、カリフォルニア州の助成を得て設置される水素ステーションは、33%に相当する水素供給量を再生可能エネルギー(風力、太陽光、バイオマス等)由来とすることが定められている。

米国での水素エネルギー開発の大きな理由の一つがエネルギーセキュリティで、石油の脱他国依存の一環としてFCVの研究開発が行われてきた。だが、シェールオイルの増産で、石油輸入依存は小さくなっているために、これからは地球温暖化対応に比重がかかるだろうが、トランプ政権はこの分野については冷ややかな態度を示している。東部の諸州でもゼロエミッション車の普及には力が入っているが、この中で燃料電池駆動のもののシェアーがどれだけになるかが課題となる。岩谷産業には事業進出に成功してほしいが、これには、日本とドイツのFCVの市場支配力に依存することになる。