ドイツ政府の成長、雇用、および構造変革委員会は1月26日、石炭火力を2038年までに全廃することに合意したとする報告書を発表したと欧米の主要メディアが一斉に報じたということだ。同委員会では反対が1票だけあったものの、2038年までに石炭を全廃する計画、およびそれによって影響を受ける州に対する総額400億ユーロの経済支援などに合意したらしい。そして、今回の発表により、2030年までにドイツの褐炭および無煙炭による火力発電所の設備容量は、現在の半分以下の17GWまで低減されると見込まれる。同委員会の提言によれば、早ければ2035年にも石炭の全廃が実現する可能性があるとしている。2018年時点では、石炭火力発電は同国の電源構成の38%を占めていた。今回合意したエネルギー政策により、パリ合意で定めた温室効果ガス抑制の目標達成を急ぐ。日本は石炭もほぼ全量輸入に依存しているが、ドイツの場合、石炭採掘は国内産業としても重要な位置を占めている。したがって、雇用にも影響が大きく、それへの対応も含めて考えると、極めて重要な政策決定をしたといって過言では無かろう。
しかし、日本ではまだ石炭火力を維持する必要があるとして、経産省は排出されるCO2を回収して固定する技術の開発する方向に向かっている。2月1日に、二酸化炭素(CO2)を産業で再利用する戦略を検討する担当部署を設置すると発表している。CO2排出が多い石炭火力発電への批判が強まる中、再利用に注力することで国際社会の理解を得る狙いがあるということだ。そして、資源エネルギー庁内に「カーボンリサイクル室」を設置する。研究対象の一つとして重点的に進めるのがCO2を回収して資源とする技術。大気中のCO2を分離・回収し、水素と合成して燃料のメタンにしたり、プラスチックなどの原材料としたりする。地中に圧入してCO2を埋めつつ、残った油を溶かし出す技術も対象となる。
しかし、日本の現実としては、石炭火力の建設が事業性を失ってLNG(液化天然ガス)火力に切り替える発電事業者も出ている。例えば、中国電力とJFEスチールは、共同で進めてきた石炭を燃料とする火力発電所開発の検討を中止するとこの1月に発表している。今後、天然ガス火力発電所開発の事業実現性検討に着手していく。また、東京ガスと九州電力、出光興産は、千葉県袖ケ浦市で新設する火力発電所の燃料について、計画していた石炭を断念することを決めた。LNGに燃料を転換すべく詳細を詰めるということだ。石炭はLNGに比べて価格が安いとみていたが、環境対策などで建設費用が膨らみ、採算が見込めないと判断したものだ。日本もどこかでエネルギー政策を根底から見直さなければならないのだろう。