電力自由化の制度的対応として、これまで一般電力事業が全て行っていた発電、送配電、電力小売事業が、それぞれ独立した事業体にすることが必要となる。そのためにまず行われたのが会計分離で、この3つの事業の運用が財務的に社内で分割され、運用の内容を明確にし、損益の移し替えが起きないようにしたものだ。しかし、これでも1つの企業が運営しているのだから、外部との競争は起きにくい。そこで、この3つの事業を独立した事業にし、発電事業や電力小売事業へ新規参入が起きやすいようにするために、法的分離が行われることになっている。2020年にはこれが終了していなくてはならないのだが、このところ次々に送配電事業の法的分離が行われている。つい最近、東北電力が送配電事業を子会社化すると発表している。送配電部門の法的分離は、電力システム改革の第3弾として、送配電部門の中立性を一層確保するため、旧一般電気事業者に求められているものだが、子会社にするということで中立性が確保できるかは不透明だ。送配電事業の法的分離への対応として、一般送配電事業を分社化し、発電事業と小売電気事業等を運営する「事業持株会社」のもとに、新たに100%出資会社として、送配電会社「東北電力ネットワーク」を設置することを基本に検討を進めることになっている。送配電事業は送配電系統を保有し運用するのだが、電力広域的運用推進機関の管理下に置かれるから透明性は確保できるだろう。しかし、発電と電力販売部門が一体とした事業会社となるとすれば、実質的な競争原理は働きにくいだろう。欧米の事例に見られるような発電所の売却を義務づける必要も出てくるかも知れない。電力市場の自由化がどこまで実現するか、これからの1年の動向を注視しなくてはならないだろう。