再生可能エネルギーの普及を促進するために設定されている固定価格買取制度(FIT)の中で、これまで50円/kWhに設定されていた20kW以下の小型風力発電の区分が撤廃され、それ以上の規模と同じ価格である20円/kWhと今年度からなった。これまで投資額が小さくて済むことと買取価格が高いことから設置が進んでいたようだが、小さいが故に事前の風況調査などが十分になされていないケースが多く、投資が回収できていない物が続出しているのが現状だそうだ。資源エネルギー庁の調達価格算定委員会が調査したところ、2012年のFIT開始以降に導入された111件の小型風力発電事業の統計を取ると、運転開始前に必要な資本費の平均値は137万円/kW、中央値は128万円/kWとなっており、政府の想定値である125万円/kWとほぼ同水準になっている。運転維持費の想定値は0円としていたが、既に運転を開始している21件の案件から算出したところ、平均値は2.7万円/kW、中央値は1.8万円/kWとなった。運転維持費が想定よりかさんでいるものの、コスト面については総合的におおむね想定内といえる。一方で20kW以上の風力などと比較すると、コストの低減は進んでいない傾向にある。
小型風力の価格区分を撤廃する方針となった大きな理由が、もう1つの重要な指標である設備利用率の問題のようだ。認定データおよび2016年6月〜2017年5月の1年間に費用負担調整機関に報告された発電電力量から、FIT制度下で稼働している小型風力発電の設備利用率を調査したところ、全体の平均値は9.1%、中央値では7.6%となり、これまでFIT価格を決める根拠の1つとしていた政府の想定値である16.7%を大きく下回る結果となった。2015年度以降に運転開始した比較的新しい設備の中央値も9.9%と下回っている。実際のところ、大半の事業では設備利用率は10%に満たないというのが現実のようだ。発電していない期間の方が長いのだから、もっと長い発電時間を想定した事業予測はあてはまらなくなっている。あまりに安易な事業計画だったものが多いということだ。この事実を踏まえて、今後も推進される中型の風力発電についても、風況調査だけは一定の時間をかけてじっくり行うべきだろう。