1990年半ばから、大阪ガスが敦賀に自社のLNG基地を建設し、そこから京都まで高圧ガス導管を敷設する計画を進めていた。しかし、基地建設予定地にある沼地に住む生物に悪影響があるとするなどとする住民の反対も強く、2002年にはこの計画が断念されていた。
ところが、今年の2月始め頃から福井県は若狭湾周辺にLNG基地を建設することを計画していたのが、LNG火力発電所の建設も含めた計画を具体的に推進することになったようだ。これまで原発銀座と呼ばれていた地域に大型火力発電所を建設するので、関西一円に送電するインフラはこれまでの原発用に整備されている。西日本には日本海側と太平洋側を結ぶ大規模なパイプラインが敷かれていないため、福井を経由して関西や名古屋をつなぐガス供給網づくりを目指しているとされる。ロシアが力を入れ始めたLNGの日本向け輸出の受け皿ともなる。
原発の推進を諦めたわけでもなさそうだが、福井県内には稼働から40年近くたった古い原発が多い。「40年の運転規制」を打ち出す政府の方針からみて近い将来、廃炉などの判断が相次いで迫られる見通しだということも、この新しい計画が具体化する可能性は高いと言えるだろう。新しいLNG火力発電であれば当然60%ほどという高効率のコンバインドサイクルになるだろうから、化石燃料を使用するとしても二酸化炭素排出量を抑制することもできる。ガス事業者である大阪ガスも発電事業に進出しているから、発電事業の拡充にもこの新基地を利用しようと考えているに違いない。大阪ガスのパイプラインは中部電力と連結しているから、中・西日本のガス供給の安定性も確保できる。後は環境アセスなどを終えていつ頃に着手できるかが課題だろう。輸入開始時期に天然ガス価格が現在よりどれほど下がっているのか上がっているのか分からないからだ。