効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

電力会社の木質バイオマス発電

関西電力が、生物由来のバイオマス燃料を使う舞鶴石炭火力発電所1号機が本格稼働をしたと発表しています。木くずなどを固めた木質ペレットを石炭に混ぜて燃料とし、年間9万8千トン相当の炭酸ガス排出を削減できるそうです。木質ペレットの使用量は年6万トンで、石炭混焼としては国内最大規模とのこと。この発電機は出力90万キロワットで、石炭火力として2004年8月から操業していたものですが、今年6月からバイオマス燃料を使った試験運転をしてきたものです。石炭だけで発電するよりも燃料コストは上がるが、環境対応の一環として実施したものだとしています。
他の電力会社も木質ペレットの混焼試験は行っていますが、使用量が年1〜3万トン程度と低いようです。石炭は燃料価格が天然ガスなど石油系のものに比べて安く、また、石炭火力は出力の上げ下げを迅速に行うのがやりにくいために、ベース運転をする発電所の燃料として使われます。石炭を燃焼したときに排出される炭酸ガスの排出量は、天然ガスに比べて2倍ほど多いために、総発電量に占める石炭由来の電力が多くなる、ということは、kWhあたりの炭酸ガスの排出量が多くなってしまうのです。しかも日本ではこの石炭火力の規模が増大しているのです。増えている炭酸ガス排出量を少しでも少なくするために、カーボンニュートラルである木質バイオマス燃料を混ぜているのです。
関西電力はオーストラリアで植林などをしていますが、多分それの利用ではなくて、発電用のチップを輸入しているのでしょう。国内で調達できれば良いのですが、これだけの量をコンスタントに供給するのは無理なのが現状だと思います。石炭に3%ほどまでなら問題なくチップを混ぜることができると聞いたことがあります。石炭に比べて木質チップのエネルギー密度がかなり低いために、もともと石炭を使うように設計されているボイラーに投入するのには限度があるのです。チップを作るためには木を切らなければならないために、樹木の生長に見合った量しか燃料として使うことは無理です。木質燃料だけを使う火力発電となると、大きな規模にすることは難しいでしょう。
中部電力も09年度からこの混焼を本格運用するそうで、年間40万トンを消費するそうですから、各電力会社がこの方式を本格化すると、地球上の森林に損傷を与えないか心配です。
中部電力は小さな規模の木質バイオマス発電も試験しています。スターリングエンジンという外燃エンジンを使って、現在30kW級の発電をさせようとしています。これまで米国製のスターリングエンジンで55kWの規模のものをテストしていたのですが、これがもともとガスを燃料に使う設計になっていたために、木質ペレットの燃焼排ガス中の粒子が原因でトラブルがよく発生したようです。そこで、新たに木質燃料専用に設計されているデンマークで開発されたスターリングエンジンを導入してテストを新たに今年から始めることになっています。2011年3月に試験が終了する予定で、これが円滑に稼働することが実証されれば、木質バイオマス発電の市場も大きくなる可能性があります。国内産の木質チップの生産体制がその頃に整っていると良いのですが。