秀和システムから夏に出版した「スマートグリッドの基本と仕組み」第2版で、日本を縦断する高圧直流幹線を新設し、北海道東北地方に豊富な風力を利用した発電からの電力を、周波数が異なる地域をまたいで送ることができるようにすることを提案し、その延長として、将来アジア大陸とも高圧直流幹線を結ぶという絵を描いた。これが検討される可能性があるかどうかは分からないままに書いたのだが、ここでは朝鮮半島を経由して中国へ、北海道からロシアへとした。これとよく似た構想が出ているということ知って驚いている。このようなアイデアが具体的に述べられている出版物をこれまで見かけていなかったからだ。
元岩手県知事で現在野村総研顧問をしておられる増田?也さんが座長である日本の新しい姿を描く日本創成会議で、韓国と電力を相互に高圧直流で融通できるようにし、それをさらにシンガポールなどに延長する構想が出されたのだ。中国、ロシアが対象になっていないのは、現在の国際政治状況への配慮だと推察する。まず韓国と連系するのは、日本単独で電力供給の安定性を将来に亘って確保するのは難しいし、韓国もこの間大停電を起こしたような不安定性を抱えているからだろう。そして、九州に接続された直流を日本全体に延長し、電力周波数の違いを克服しようというのは、冒頭に出した本の内容とよく似ている。年明けにも韓国側との協議入りを目指し、2020年をめどに実現するというから、単なる構想に留まるものではなさそうだ。そして2050年をめどに、極東から東南アジア、豪州に至る広大な地域で送電網を相互に接続し、電力の融通を可能にするという。基幹ケーブルの日本側の末端である福岡からは、東日本に向けて伸びる日本列島の「背骨」のような別の海底ケーブルを設置する。背骨ケーブルは、日本の電力会社が東西各地で運用するグリッドに、交流・直流変換設備を介して支線で接続する計画。この部分は自説とほぼ同じ。単なる夢に終わらなさそうなのは嬉しいことだ。