効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

確信犯

菅首相は、福島第一原子力発電所事故以来、脱原発に向けて動くことに決めていたのではないかと思うようになっている。原発の稼動をできるだけ維持しようということであれば、中部電力浜岡原発の停止を要請するのはもっとも愚策であったといえる。国民が日本全体の原発に注目するような行動をとり、いわば原子力稼動継続について反対する機運を盛り上げるために中部電力に働きかけたのだ。停止命令を出す権限はないから、要請という形をとったが、事実上の停止命令だった。その後ドイツのメルケル首相が、これまでの方針を変更して、もっとも古い原発を停止させると同時に、厳重な検査をする方向を打ち出した。これで菅首相は自分だけではない、日本だけではないという言い訳ができるようになった。
ところが、産業界、経産省は、電力不足は日本の工業部門に大きなマイナスの影響を与えるとして、定期検査中の原発の再稼働を予定通り進めようとした。それに同調したのは玄海町長だ。ところがそれを根底からひっくり返したのが、緊急時に十分な電源がなくなることはないかを調べるストレステスト実施の指示。これも菅首相独自の判断だったかもしれない。この時期ではなく、秋に指示してもおかしくないものを、なぜこの時期にしたのだろう。どうも夏の電力不足をとことんまで実現させて、あわよくば原発がなくてもなんとかしのげるということを実証したかったのではないか。そこへ九州電力が企業ぐるみで玄海原発再稼働にむけて、企業城下町の下請けを動員して稼動要請のメールを出させたことで国民の不信感が一挙に高まった。これで菅首相は、これ以上何をしなくても、稼動が停止している原発は当分動かない、あるいはストレステストで不備が分かって停まるものも出るかもしれないから、ほとんど原発からの電力は期待できなくなる。
どうも菅首相の想定した軌跡で脱原発が進んでいるのではないか。産業界はこれで海外移転が進むというが、近くの中国などはどこもこれ以上の電力不足だ。電力を求めている企業が進出するはずはない。国内で自前の電力を生み出すだろう。その方が海外で自家発電を設置するより安定しているからだ。後は燃料価格と供給の安定性が課題だ。天然ガス価格はいわれるほど急上昇はしないかもしれない。菅首相は後世に、エネルギー変革をもたらした首相といわれるようになるかもしれない。