効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

藻類燃料

毎日新聞6月30日の朝刊に、筑波大学大学院の渡辺 信教授が書かれた論考からいろいろ教えて貰った。バイオ燃料の資源として藻類が重要であることはここで何回か書いたことがある。その藻類に、光合成に頼らないで成長するものがあることを始めて知った。光合成をしないそれは、石油系のオイルを高濃度に蓄積し、従来の藻類より10倍以上高い生産効率をもつオーランチオキトリウム。舌をかみそうな名前のものだ。光合成ではなく、有機物を取り込んで増殖する従属栄養性藻類の一種で、コンブ、ワカメと親戚なのだそうだ。同教授はこの培養株を世界に先駆けて確保したという。再生可能エネルギー論議が最近盛んだが、発電に傾きすぎているとは考えていた。どこまで行っても液体燃料は必要であり、石油に代わる将来の液体燃料資源の担い手はバイオマスエネルギーであることは確かだ。バイオマス燃料については、食糧資源との競合がある部分も指摘されている。しかし、藻類は食糧資源と競合しない。コンブ、ワカメは主食ではない。この藻類から石油と同成分の油が高効率で生産できるのだそうだ。
光合成で成長する藻類も着目されている。だが、同教授によると、光合成藻類だけによるオイル生産の理論的最大値は354トン/ヘクタール/年だが、現実的にベスト値は40〜53トン/ヘクタール/年でしかないそうだ。原油と見合うオイル生産コストに実現には、従属栄養性藻類と組み合わせて1000トン/ヘクタール/年以上に上げる必要があるとしておられる。藻類の多くは油脂植物と同じ植物油を作り出すが、それを、軽油、ガソリンなどの運輸燃料とするにはコストの観点から高いハードルがあるそうだ。このため直接石油と同じような成分の炭化水素を多量に産する藻類の確保が重要となるのだ。ここにオーランチオキトリウムの重要性がある。この栽培の技術開発にもっと日本も重点を置くべきだと主張しておられるが、早く事業性のあるプロジェクトに育てるために技術開発促進を政府ベースで行うべきだろう。米国では藻類燃料開発に1000億円を超える投資が行われて開発戦略シナリオがあるそうだ。ここでも日本は周回遅れかもしれない。