効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

2万キロワットのフライホイール

米国のビーコン社が、ニューヨーク州のStephentownに2万キロワットの周波数制御用のフライホイールを建設設置することになった。これはこの規模としては米国初のもので、全ての認可も得られていて11月末から着工される。建設コストは4千3百万ドル(約40億円)で連邦融資銀行からのローンが得られているが、DOEの資金調達保証を今年初めに与えられている。
日本では風力発電太陽光発電といった変動する自然エネルギーによる発電の出力変動で影響を受ける供給電力の周波数制御にはもっぱら大型の蓄電池が使われるように言われているが、このフライホイールが実稼働して性能が確認されれば蓄電池の競合相手となるだろう。いままで、データセンターなどの無停電電源(UPS)の一部に使われているのは知っていたが、その規模はせいぜい数十キロワットであると理解している。ずっと前にここで書いたこともあるが、フライホイールは重量のある金属や炭素繊維コンポジットでできた円盤の軸に繋がったモーターを外からの電気で高速回転させる。電気の供給を止めても円盤は慣性で回り続けるので、エネルギーを保存(蓄電)できる。電気が必要になったときにモーターを発電機に使って発電して外部に供給する。回転ができるだけ長く続くように、容器内の空気は抜かれて真空にする他、軸受けの摩擦も減らすために磁石で浮かすようにするのが一般的だと聞いている。ただ直径の大きな円盤が高速回転するために、その円盤の円周上の速度は非常に大きくなって遠心力で破壊されないような構造でなければならない。充放電効率は90%を越えると文献にあるから、蓄電池よりも性能が良いかもしれない。
もちろん一基で2万キロワットではなく、100キロワット単位のものを千キロワット規模のユニットにしたものが並列で連結されるはずだ。このメーカーのウエブで見ると、2万キロワットを最大15分間維持できるという。フライホイールは全て物理的な構造を持つ機械設備だから、蓄電池のような化学物質を使わないという点で環境的に見て好ましいものだ。また構造が単純だから維持管理もやりやすいはず。日本で大きな規模のフライホイールが電力系統で稼働させることは検討されていないのだろうか。