日本は地球温暖化対応の切り札的政策として太陽光発電の導入を促進しようとしている。同時に太陽電池の製造コストを、できるだけ早く家庭用の電気料金であるキロワット時あたり24円ほどに、さらには業務用電気料金である約17円に引き下げようとしている。この目標達成には、シリコン系の太陽電池では、薄膜系でもなかなか難しいかもしれない。シリコンを使わない色素増感型やCIGS化合物系のものの方が製造コストは安いのだが、問題は太陽光を電気に変換する効率がシリコン系の10数パーセントに比べて低いために、大きな面積を必要としてコストメリットが消えてしまう。
ところが、10センチメートル角の色素増感型太陽電池で変換効率が従来の二倍に相当する10%に達するものを東京理科大学の荒川教授らが開発したそうだ。電極構造を工夫して性能劣化も防いでいるとのことで、5年後をメドに実用化を目指しているという。光触媒として知られる酸化チタンを有機物の色素でコーティングした材料を電極で挟んで製造する。色素が吸収した光のエネルギーを利用して酸化チタンで電子が発生し、電流が流れる仕組みだそうだ。シリコン型に比べて製造方法が簡単で、実現すれば太陽電池の価格が数分の一になるといわれる。確か出光興産がこの型のものを開発しているはず。高度な印刷技術で発電素子を作ることができるはずだ。耐久性に課題があると聞くのだが、開発者はシリコン系に対抗することを目指しているのだから、少なくとも10年は平気なものでないと成功したとはいわないだろう。これからの価格競争が楽しみではある。