昨日甲子園球場のことに触れて、表示が新技術を採用しているだろうと書いた。最近の表示板は明るくかつ大きくなっている。LEDを使ったものが多くなっているので、点光源の集積で見やすい。ただ、面積が大きくなると、使われるLEDの数が極端に多くなる。そうすると消費する電力も大きくなる。いくらLED単体の効率が高くても、それぞれの点が消費する電力を設置されたLEDの数で掛けてやると半端ではない数字になるだろう。将来は有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の発光効率が良くなって広い面積でも明るくできるようになれば、これに置き換わるだろうが、当面はLEDしかないだろうと思っていた。
ところが、最近の報道で、制御機器大手のIDECが光ファイバーを使った超大型ディスプレーを開発して3月から受注を始めると知った。これは、市販のプロジェクタで映した画像を光ファイバーの束で取り込んで、光ファイバーを分散配置したモジュールで表示し、そのモジュールを組み上げて大画面にするという。IDECのホームページで探してみたがこれの説明を見つけることができなかった。IDECもLED表示機器を製作しているので、異なった商品開発をしたことになる。ディスプレーはプロジェクターの消費電力だけで良いので、LEDランプディスプレーの20〜35%で済むと報道されている。
試作されているのは78型で、モジュールは9.6センチメートル四方で直径0.75ミリメートルのファイバー576本を通す穴を持つ。ファイバーの先端が綺麗にそろっていなければいけないが、その高精度製造技術を開発したようだ。そして、画面の前面で光を拡散するプラスチック部品を福井県工業技術センターと共同で開発してディスプレーの視野角を拡げたという。ディスプレーに使用するプロジェクターは、一台が画面の一部を担当することになるのだろう。画質や精細度はこのプロジェクターの性能に支配されるはずだ。価格は150型で4千万円前後というから、おそらくLEDによるものよりも安いのだろう。光ファイバーは一端から入った光をほとんど減衰なしに反対側まで伝えることができるから、画像の位置関係が乱れないように束ねるのに成功したのがこの商品を完成させたのだろうと思う。面白いものが出てきたものだ。