効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

鉄のメーカーが太陽電池のメーカーに

今日の日経新聞のトップに、新日鐵JFEスチール太陽電池の基礎素材である多結晶シリコンの量産に入ると出ている。新日鐵は、生産コストを最大5割低減できる製法を開発して、年産2千トン規模の新工場を2010年にも建設するとのこと。それに先立ち、八幡製鉄所内に年産480トンの設備を建設し10月から生産に入る。JFEスチールも今年度中に300トン規模のプラントを建設する。世界的に太陽光発電市場が急速に拡大することを見越し、品不足が長期的に予測される多結晶シリコンの製造に乗り出したものだ。
従来、半導体用に製造した多結晶シリコンを太陽電池に転用しているため、ある意味で純度が不必要に高くコストが高い。それを製鉄技術を転用して、純度を落とした専用の多結晶シリコンを製造する方法を開発したそうだ。鉄鉱石から鋼鉄を作る技術に共通するものがあるからだと解説されている。昔新日鐵半導体事業に乗り出し、友人がNTTから引き抜かれたが、結局ものにならず、その友人も転職を余儀なくされていた。同じようなことにはなってほしくないものだ。
また、新たに太陽電池用多結晶シリコンの製造量が増えたことによって、日本で太陽電池の設置が増えるかというと、現在の状況から見るとそれは望むべくもない。増量分のほとんどは、欧米、中国など、太陽光発電の拡充を促進する政策をとっている諸国、地域に販売される太陽電池素子に使われるだろう。日本の現行政策では太陽光発電事業は収益性のあるものにならないために、炭酸ガスを排出しない電源として、極めて安定したものである太陽光発電の能力を拡大する方向には動かないのだ。多結晶シリコン製造はグローバルなビジネスではあるが、それが原産地である日本の気候変動対策にも有効な貢献ができるような政策を早く打ち出さなければ、日本は世界の環境対応動向にも大きく遅れをとることになるのではなかろうか。
電源のベストミックスとして、太陽光発電がどのような役割を果たすべきか、中長期の新たな計画策定が必要ではないか。