効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

木質バイオマスの利用

木質バイオマス利用研究会から「木質エネルギー」という雑誌が届いた。年に4回発行される季刊誌で、岐阜県立森林文化アカデミー学長の熊崎 実先生が責任編集をしておられる。内外の木質バイオマス利用の動向が簡潔に述べられていて、これが届くと今回は何がでているかとページを開けるのが楽しみである。
今回の秋号は、木質バイオマスの利用について、何が問題かよく分かる記事の構成になっている。山形県岩手県が地域のエネルギー開発に取り組んでいる様子、よく知られている岡山県の銘建工業の運用実績、木質バイオマスの冷房への利用、燃焼時に排出される環境汚染物質と広い課題を取り上げている。冷房への利用について関心があったので、2つの事例が紹介されているのは有り難かった。
熱を加えて冷房する理屈は結構ややこしいのだが、冷媒に臭化リチウムを使う吸収式冷暖房システムがそれである。小型の建物にも使える規模のものもある。木質燃料の熱を直接使う方式と、一度熱で高温水を作ってシステムの熱源に使うものとがある。課題は、素材がいろいろだし湿分も異なるために石油やガスのように安定した燃焼をさせにくい木質燃料をいかに使うか、また、その木質燃料をいかに安定して供給できるようにするかである。蒸気発電以外には、木質バイオマス燃料を給湯暖房用熱源に使うのがもっとも普遍的だが、暖房を中心とする場合、夏期に燃料への需要がほとんどなくなってしまう。これは燃料供給側から見ると、需要の変動を何か他のものでカバーしなければ事業として成立させにくい。利用側からも運転要員などのやりくりがしにくいし償却負担も大きくなる。吸収式を使って冷暖房するとすると、燃料への需要は年間を通じてあまり大きな変動はしない。木質バイオマス燃料の利用としては今後期待できる分野ではないか。
石油の価格が急上昇し、電力やガスの価格も下がることはないと予想されるとはいえ、一番肝腎なことは木質バイオマス燃料の価格をこのような他エネルギー源と対抗できるようにすることである。これは市場に任せていては到底実現できないことは明らかで、再生可能エネルギー促進の観点からした制度の設定が必要であろう。同時に、安定した燃焼を可能にするバーナー・ボイラー技術の開発も不可欠である。また、燃焼で出てくる灰の処理も課題となる。幾つもの課題を持つ木質バイオマス燃料であるが、この普及が進まなければ、単に地球温暖化への対応だけでなく、日本の林業再興、産業廃棄物処理、さらには地球規模での自然環境保護にも関わる資源の利用を確実なものにすることはできない。基本的なエネルギー政策を強化し、各地域が機器メーカーと力を合わせて適切なシステムを実現してほしいと願っている。
http://www.woodenergy.net でこの季刊誌について知ることができる。