効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

ホンダワラでバイオエタノール

休耕田に収穫量の多いお米を作って、それをバイオエタノールの原料にすることについて最近コメントしたが、海草であるホンダワラを原料にする計画もあるようだ。海藻類は海に囲まれている日本としてはもっとも考えやすいものではある。中でもホンダワラは、どの海岸でも打ち上げられているのが見られるように普遍的だし、比較的浅い海の岩などに根付いて繁茂するために、原料として採集するのが比較的容易だろう。根から離れたものが流れ藻として魚の繁殖にも好適な場所を提供しているそうだ。計画されているのは、日本海中央の大和堆と言われる浅瀬で繁殖させるものと聞く。
果たしてバイオエタノールの原料に使えるかは、お米と条件が違っている。まず、海水の中で生育するのだから、採集したものには必ず塩分が含まれている。また、お米のようにでんぷん質が固まっているのではないから、エタノールにするための発酵プロセスにもっていく前に除去しなければならないものも多いはずだ。そうしないと発酵菌が快適に活動する環境を創ることができないから、エタノールの収率を上げることはできないだろう。発酵菌が快く感じる条件を作り出すためには、海から採集した原料を処理するのに大量の淡水が必要となるかもしれない。
生育条件が見つかったら、バイオエタノールの原料として本格的に使うためには、大量のホンダワラを特定の海域で成長させる必要がある。そのためには、ホンダワラの繁殖条件を調べて、それに適した場所を見つけなければならない。果たして大和堆が適しているのか。さらに、ホンダワラを大量に繁殖させるのに成功したとしても、そのこと自体、その海域の自然環境を大きく変えることになるのは確実である。魚の生息分布が変わるかもしれない。ホンダワラが海水の成分を吸収するために海水濃度の大きな変化をもたらすかもしれない。大量のプランクトンの発生が赤潮の原因になるのと同じことが起きないだろうか。工業的発想を優先させると手痛いしっぺ返しを食わないとも限らない。
原料にするということからすると、大量に収穫できるだけでなく、その量が安定的に確保できなければならない。大量繁殖する海域の近くにエタノール製造プラントが建設されるだろうが、プラントの稼動を安定させるためには、一定品質の原料が安定的に供給されなければならない。数年は大量繁茂に成功しても、環境条件の変化で生育しなくなったりすると、プラント自体を放棄しなくてはならなくなる。
このように考えていくと、どうもホンダワラからバイオエタノールを造るというのは成功しないのではないかと思える。