効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

昨日聞いた話: 食糧問題とユーグレナ

昨日、バイオガスシステム研究会の月例会があって、大阪府立大学名誉教授の中野長久先生から食糧問題をテーマにしたお話を伺った中で、ユーグレナというあまり耳慣れない単細胞微生物のことが面白かった。資料なしの話をメモしただけのものに自分の解釈をいれているので間違いもあるかも知れないが、大勢に影響はあるまい。
現在世界で生産される穀物は年に17億トンだそうだ。穀物は人間が直接食べるという形で消費される以外に、牛や豚、鳥といった家畜を育てるのにも使われる。ステーキを食べるのは間接的に穀物を食べていることになる。この穀物生産量は過去毎年増加していたが、1990年頃以降頭打ちになっている。肥料の投入、品種改良、栽培法の改良、耕地面積の増加などが過去には貢献していたのだろうが、穀物生産性の向上に限界が来たようだ。
牛肉1キロを得るのに穀物が11キロ必要。豚肉の場合にはそれが7キロ、鳥はもっと少ない。ところが中国などで、所得が増えるに従って牛肉シフトが進んでおり、食料を生み出す根元である穀物自体の生産性が低下している。穀物の生産量が頭打ちになる一方で、その消費に向けた効率が低下するということは、これから地球規模で食糧不足になる可能性を示している。何か穀物に代わるタンパク源を見つけなければ、人類の将来に不安が出てくることになると考えた中野先生が着目したのが藻の一種であるユーグレナである。
ユーグレナは50ミクロンほどの長さで一つの鞭毛を持っていて、太陽の光をエネルギーにして炭酸同化作用をする比較的大きな単細胞緑藻である。これは50億年前から地球に存在していたのだが、その頃の地球は大気に炭酸ガスが大量に含まれていたようだ。そのせいだろうか、ユーグレナ炭酸ガス濃度が40%ほどのところで増殖速度が最高になる。生命に不可欠な無機塩類とビタミンが若干入った水の中に炭酸ガスの多い空気を吹き込んでやると、太陽さえ直射すればいくらでも増えるし、その細胞の中には極めて良質のタンパク質が形成されるという。これを集めて何か適切な加工をしてやれば、人間が食べないまでも、家畜の餌としては極めて優れたものができることになる。食糧問題を悪化させない一つの方策になるかも知れない。クロレラが商品になっているが、それ以上に増殖の速度が早く、できるタンパク質の品質でも優れたものだそうだ。
もう一つ面白いのは、40%の炭酸ガスを含む大気というのは丁度火力発電所から排出されるガスと同じ程度のものだという。地球温暖化防止のために火力発電所からの炭酸ガスを固定する技術の開発が要請されているが、ユーグレナがこのガスを好むとすれば、ユーグレナの大規模培養池に排ガスを吹き込んでやれば、太陽さえあれば光合成炭酸ガスをタンパク質という生命の基という形で固定してくれることになる。
ユーグレナは食糧問題と地球温暖化問題解決に貢献する一石二鳥の秘策になるかもしれない。
Wikipediaに紹介されていた図を拝借して見て貰うことにする。