効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

増産されるNAS電池

NAS(ナトリウム−硫黄)電池の生産規模を増強すると、唯一のメーカー日本ガイシが発表した。この電池は作動温度が高い大型の蓄電池で、50キロワットが一つのモジュールになっていて、それを重ねて数百キロワット、あるいは数千キロワットと大規模化できる優れた分散型電源である。東京電力と共同開発してきたものだが、安い深夜電力を貯めて昼に使うとかの負荷平準化、高品質の電力を必要とするところへの設置などの需要が伸びるほか、出力が変動しやすい風力発電の特性改善などにもこれから使用される機会が増えると見てのことのようだ。海外からの需要も伸びているらしい。07年度の販売目標が9万キロワットであるのを4〜5年後には15万キロワットにするというから積極的だ。
このような大型の蓄電池には、他にレドックスフロー電池がある。関西電力住友電工との共同開発で製品化され、自分が客員をしている関学の三田キャンパスにも使われている。しかし、最近設置の具体例を聞いていないのはどうしてだろうか。これは燃料電池と同じような原理で蓄電し、NAS電池よりも作動温度がずっと低いしナトリウムという危険物を使わないという利点があるが、設置面積が大きくなるのが制約となることもある。電解質膜の耐久性は改善されたのだろうか。
これからこのような大規模な蓄電設備への需要は急速に伸びるだろう。社会がITにがんじがらめになりつつあるわけだが、その社会を支えているのは大小のコンピュータであって、これへの電力供給は一瞬たりとも止めることはできない。そのためのバックアップ電源への投資はいわば保険のようなものであって、電力供給に支障があったときの損害額から計算した安全率からはじき出される。だから通常よく言われる発電能力キロワット当たりの設備単価だけの評価ではなく、リスクをどれだけ引き下げてくれるかの価値との比較になるから必ずしも安価である必要はない。いろいろな電源との組み合わせもしながら目的を達成することが最優先課題となる。
このような意味合いのある大型蓄電池を、風力発電の出力安定化に使うのが推進されているのはどうかと思う。大型の風力発電設備が系統に接続されたときに、どのような挙動がどのような影響を系統に与えるかについてもっと実証的な検証を行ってからでも遅くないと思うからだ。蓄電池を使う必要があるケースもあるには違いないだろうが、それを当然のことにする方向に行くとすれば、風力発電のコストを不必要に高くし、普及を遅らせる要因になるからだ。ひょっとすると普及を遅らせるために大型蓄電池の設置を標準仕様にしようとしているのかも知れない。