今日の新聞に、安部首相がほぼ全ての国の庁舎に太陽電池の取り付けと、屋上緑化を取り入れると表明したと報じられている。打つ手がなくなったのだなという感じもあるし、マーケットメカニズムの働かない方式で普及させようとするのは長い目で見て好ましいことではないと思える。さらに出る疑問は、ここでの太陽光発電で生じるRPS(Renewable Portfolio Standard;電気事業者が義務づけされる総発電量に占める再生可能エネルギーの達成比率)価値をどこが、どのようにして手に入れるかである。RPSに関して、太陽光発電はRPS価値を2倍に見るという決定が最近なされているから、電力会社とすれば譲り受けたいところだろう。いままでに家庭用として取り付けられた太陽電池のRPS価値は、数年前に電力会社が無償で入手した。余剰電力を買い取っているのだから当然だというのが電力会社の言い分だろうが、一通の承諾書をその意味が全く分からない設置者に送ることで、一種の私有財産権を無償譲渡することに合意する判を押させたのだった。
官公庁の建物の場合、電力の消費規模が大きいために、太陽電池から余剰電力が発生することはまずないと考えられる。そうだとすると、発電された電力には潜在的なRPS価値が発生するし、それをグリーン証書として販売して収入源にすることも可能になる。それを自動的に電力会社に無償で渡してしまうようになれば、国民の税金で設置した太陽電池の環境価値を恣意的に、しかも一業界を利する形で処分することになる。少なくとも電力会社以外の発電事業者や一般企業も含めて入札することを考えるべきだろう。