効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

オール電化ハウス

昨日、環境市民グループのリーダーから質問された。オール電化ハウスは環境に良いと電力会社は言うけれど、本当でしょうか、というものだ。私は、電力会社の言う「エコ」はエコノミーが主体で、必ずしも炭酸ガス排出を抑制するようになるとは言えないと思う、と答えた。確かにヒートポンプ給湯器「エコキュート」の効率は、従来電力会社が販売に力を入れながら売上が横這いだった安い深夜電力を使う電気温水器よりはるかに高い。しかし、4.8などとカタログに書いてあるCOPはあくまで最高値であって、実際の稼働状況ではそれより低くなる。しかも貯湯式であるため、深夜電力で暖めたお湯が放熱でどうしても冷めるというロスが発生するため、一次エネルギー換算するとガス瞬間湯沸器とほぼ同じではないか。ただ、夜の電力は、原子力発電からのものの比率が高いから、稼働中の炭酸ガス排出は昼に比べれば低いだろう。しかし夜間の発電には炭酸ガス排出が石油よりも多い石炭火力もベース電源に入るから、何とも言えなくなる。とはいえ、CO2ヒートポンプ給湯器「エコキュート」が優れものであることはたしかだ。消費者が給湯用の光熱費だけを見ると、原子力発電がフル稼働できるように設定された極めて安い深夜電力を使うから、おそらく経済的になるだろう。
このエコキュートを中核に置いたオール電化ハウスはエコロジー的か。そんなことはない。エコキュート以外の電気機器は、平均的に見れば40%弱の発電効率に送電ロスでさらに効率が下がって家に到着した電気を使うのだから、電気機器の効率を考慮に入れるとおそらく一次エネルギーの2〜30%しか有効に使えないことになる。殆どの電気機器は、深夜以外の時間帯で使われることが多く、エネルギー単位の価格が高い電力だけを使っているから、ガスも使っている家よりも高くなるはずだ。また、昼間は化石燃料を使う発電所から来る電力の比率が高いから、全体としての炭酸ガス排出量は、ガスも使うところに比べれば高くなるだろう。電気料金がそれほど高くならないとすれば、オール電化ハウスに適用される割引率が効いているからに違いない。
電機メーカーが準備したIHヒーターのカタログに、調理時の熱効率がガスコンロに比べて高いと書いてある。使用時点での効率はその通りだろう。しかし、だから地球環境に良いとはならない。ガスは100%家庭に届くが、化石燃料で発電された電気はIHヒーターに届いた時点で、元の燃料の持つエネルギーの3割ほどしか届いていない。地球温暖化防止という観点からすると、ガスコンロの一次エネルギーから見た熱効率の方が高くなる。
給湯についても、ガスの瞬間湯沸器で、潜熱回収をして90%を超える熱効率を出す「エコジョーズ」があり、貯湯の温度ロスがないだけに「エコキュート」と炭酸ガス排出抑制という面では互角以上に機能する。炭酸ガス排出量が石油、石炭に比べて少ない天然ガスと、原発からの電力の炭酸ガス排出ゼロとをどのように評価するかによって、結論は異なるだろう。
しかし、光熱費抑制という観点から見ると、オール電化ハウス向けの料金が安いので、オール電化はエコ(ノミー)だというケースは多いだろう。お金で評価するか、地球環境を守る観点で評価するか。これを決めるのはユーザーの価値観次第である。