効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

■5G基地局に信号機開放

通信速度が大幅に上がる5Gでは、周波数が非常に高いために電波が飛ぶ距離がかなり短くなる。ということは、日本中を5Gで利用できるようにするためには、現在設置されている4Gまでの通信基地では数が足りなくなる。だが、通信設備を設置する場所はほとんど利用し尽くされているために、5G向けのアンテナを新規に設置する余裕がなくなっている。その打開のために打ち出された方策が、自治体が全国に設置している約20万基の信号機をNTTドコモなど国内通信4社に開放し、次世代通信規格「5G」の基地局として利用できるようにするというものだ。自治体は自動運転の実現や災害時の情報伝達などに利用する。信号機の5G利用は2020年度から複数の都市で実験を進め、23年度の全国展開をめざすということだが、展開のスピードが遅いようにも思える。

5Gの普及には全国に数十万規模の基地局の整備が必要とされる。電波の飛ぶ距離は4Gに比べ短く、たとえば5G向けに割り当て済みの28ギガ(ギガは10億)ヘルツ帯の周波数は半径数百メートル程度といわれる。つながりやすいネットワークの構築には、できるだけ多くのアンテナの取付が必要となる。それに信号機を利用する案は非常に面白い。すでに設置済みである設備を利用できるし、そこへの電源もあるし、停電の時にも対応が早い方策もできている。設置場所も特定しやすいから、位置情報なども検出が早いだろう。今後展開する自動運転にも対応しやすいだろう。コスト抑制も期待できる。ドコモは4Gの基地局を18年度末時点で全国20万8500局保有する。10年度から18年度までの累計の投資額は約2.4兆円と、1局あたりの投資コストは約1千万円かかった。5Gは既存基地局のソフトウエアの更新でも対応できるため、1局あたりの投資は4Gより少ない見込みだし、信号機を利用すれば投資費用を大幅に圧縮できる可能性が高いという。

面白いとことに着目したものだ。

 

■蓄電池の発火予防

蓄電池はその大小を問わず、内部でどのような変化起きているかを把握することは難しいということは理解していた。だから、家庭にまで蓄電池が普及するようになると、それが火事などの原因になるのを防がなくてはならない。それについて、必ずしも手軽な方法ではないが、内部の状況を画像化する技術が開発されたそうだ。

Integral Geometry Science(兵庫県神戸市)と神戸大学数理・データサイエンスセンター(同)は5月29日、蓄電池内部の電流と、蓄電池外部に漏洩した磁場に関する逆問題の解析を通じて、磁場の空間分布を測定することで電流密度分布をリアルタイムに非破壊で画像診断するシステムの開発に世界で初めて成功したと発表したというのがそれ。今後、電動車両の普及に伴って蓄電池生産量の増大が見込まれる中で、蓄電池の製造工程における全数検査が確立されれば、蓄電池の安全性を飛躍的に向上させることが可能となる。Integral Geometry Scienceは、今後2年以内に製造工程における全数検査が可能なインライン検査システムの販売を開始する予定だということだ。

今回開発した技術は、電流が流れる際に周囲に発生する磁場の空間分布を測定することにより、蓄電池内部の電流密度分布を測定するもの。開発においては、まず正極負極間の距離が電池の電極サイズに比べると無限に小さいとみなせることから、蓄電池内に流れる3次元的な電流は、薄い平行平板間に閉じ込められていると考えた。そこで、これを蓄電池における静磁場の基礎方程式に取り入れることにより、この逆問題を世界で初めて解析的に解くことに成功したというもの。

これまで、電流密度分布から磁場の空間分布を数学的に導出すること(順問題)は可能だったが、磁場の空間分布から電流密度分布の導出(逆問題)は非常に困難であり、実現されていなかった。しかし、同技術によりこの課題が解決された。さらに両者は、磁気センサーを2次元に並べることで、リアルタイムに磁場の空間分布を測定する装置を開発し、測定した磁場から逆問題の解析を行うことで、リアルタイムに非破壊で電流密度分布を映像化するシステムを開発した。蓄電池の発火原因を解明することが出来るようになったもの。発火事故などの原因の一つとして、出荷時の蓄電池内部の電流密度が空間的に不均一であり、その度合が蓄電池の充放電とともに次第に大きくなり、最終的には短絡、発火となることが考えられる。そのため、出荷前の蓄電池の電流密度分布を非破壊で精密に計測する技術が求められていた。同時技術は、こうした要望から開発されたものだ。今回の技術は、新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)の「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」において研究開発されたものだそうだ。

小型で蓄電容量の大きいものが商品として登場してくるのに伴って起きる可能性のある発火リスクを予防できるのは、社会的にも意義が大きいと思う。

 

■学校などの蓄電池利用

仙台市東北大学NTTドコモは、仙台市内の指定避難所である小中学校などにある蓄電池の有効活用に向けた協定を結んだ。各地の蓄電池を一括管理することで効率のいい充放電や残量の可視化などを目指す共同実験を始める。実証期間は2021年3月末までで、市が小中学校などの指定避難所196カ所に太陽光発電設備とともに設置している蓄電池の一部を一括管理する。蓄電池の設置数がかなり多いのにビックリさせられた。将来、一部ではなく殆ど全部の蓄電充電の管理制御をすれば、かなりの量の容量を管理できることになり、よく言われる仮想発電所に育て上げることも可能だろう。天候の予測をして、快晴が確実なときには太陽光発電の電気を十分蓄電できるように、夜の間に放電しておくこともするらしい。学校の先生も遅くまで仕事をされるだろうし、冷蔵庫もある。夜の放電に見合った電力消費は確保できるだろう。

仙台市と東北大はこれまでも蓄電池の一括管理に取り組んでいたが、メーカーが異なるとできないのが課題だった。ドコモの技術を通して、メーカーが異なった場合でも一括管理を可能にし、災害対応力を強めるということだ。メーカーが異なると、充放電の特性が異なるからだろうが、一緒に組み込めないほど難しいのだろうか。逆にどのメーカーの蓄電池でも制御できるようになるとすれば、学校だけでなく、家庭に設置された蓄電池まで取り込むことも出来るようになるかも知れない。広い地域が仮想発電所として機能することになる。さらには、電気自動車がこの制御に組みこまれば、電気自動車のオーナーにもかなりのメリットが出ることになる。教師が電気自動車で学校に来て駐車しているときに、充電できるような仕組みを作れば、蓄電容量はさらに大きくなる。学校群全体でとりまとめて電気を売買できれば、教育委員会の電気関係予算も少なく済むようになるかも知れない。

このような制御が一般化すれば、蓄電池メーカーでもそれに関係する特性を共通化するインセンティブにもなるだろう。蓄電池には系統との連系システムが取り付けられているから、それの標準化をすれば済むのかもしれない。

■九州電力、石炭火力を新設稼働

九州電力がこの6月1日に石炭火力(100万キロワット)松浦発電所2号機を新設稼働させると発表している。まず試運転から始め、12月から営業運転に切り替える。高性能の排煙・脱硝装置や電気式集じん機などで酸性雨の原因になる窒素酸化物や硫黄酸化物の排出を抑制できるのが特徴だという。高温・高圧下で石炭を燃やす「超々臨界圧微粉炭火力」のため、発電効率も1号機に比べて高い。発電効率が高く燃料費の低減につながるため、九電の2020年3月期の連結業績で営業利益を約70億円押し上げる効果があるとのことだが、いくら最新技術で効率が高いといっても、天然ガス火力よりもCO2排出量は多いはずだ。地球環境への配慮よりも利益を優先したと言うことだ。

石炭火力発電は、出力を他の火力発電ほど柔軟に出力を下げることができない。ということは、いまいろいろ言われている、快晴の日に太陽光発電からの出力が大きくなりすぎて、全体の発電量が需要量を上回るため、太陽光発電の出力を抑制する比率が高くなるということになる。石炭火力は夕刻からの需要量の増大に備えて、出力は下げるとはいえ維持するから、その分だけ太陽光発電の出力抑制量は多くなる。原発はこの時でもフル稼働をするのだが、原発からCO2の排出はないから温暖化の側面では問題とはならない。ただ九電全体の発電量に占めるグリーン電力の比率が下がるということだ。石炭火力発電からの排ガス中のCO2を捕捉して固定化する技術はまだ開発途上だし、たとえそれを使うとしても発電コストは大幅に高くなる。

できたものは仕方がないが、これが最後にしてほしい気持ちだ。

■IEAが「原発縮小 温暖化のリスク」を報告

国際エネルギー機関(IEA)は5月28日に、原子力発電の後退による中長期の影響をまとめた報告書を公表している。原子力発電所の維持や新設などの手を打たなければ、先進国では2040年までに原発の発電能力が最大で約3分の2減ると予測し、電力需要を他の電力源で賄えば、費用や温暖化ガス排出量の増加につながると分析し、急激な原発縮小のリスクを警告している。

報告書によると、先進国では2018年には原子力が電力供給の18%を担っており、最大の低炭素エネルギーの供給源となっているが、1970~80年代に建設した原発の老朽化が進み、近年は発電に占める割合が下がっている。耐用年数を過ぎた原発廃炉がこれから各国で増えると見通している。今後、風力や太陽光など再生可能エネルギーの発電量は増えるものの「原発への投資がなければ持続可能なエネルギーシステムの実現をさらに難しくする」と強調し、原発の先細りは電力の安定供給の観点からも問題を生じると見ている。

IEAは安全性に最大限配慮した上で運転年数を延長することや、低コスト化が見込まれる「小型モジュール炉(SMR)」と呼ぶ次世代原子炉の開発支援などの政策を提言しているが、この提言にはそれなりの根拠もあり、一概に否定は出来ないものの、使用済み核燃料の処理などについてどのように評価しているかも加えてほしかった。IPCC地球温暖化が最近加速されていると警鐘を鳴らしているのも考慮すべきことで、原発をある程度維持する必要があることは理解している。その一方で、再エネの急増が系統に悪影響を与えないような方策も推進する必要があるだろう。

国際エネルギー機関(IEA)は、3月26日に、世界全体のエネルギー需要が2018年に2.3%増加し、伸び率が過去10年間で最大になったとの調査結果「Global Energy & CO2 Status Report 2018」を発表している。世界のエネルギー需要の抑制策も同時に実施されなくてはなるまい。世界中で増加する電力需要の伸びに電力の供給が追い付かず、石炭の消費も増加している。その結果、18年の温室効果ガス排出量は世界全体で1.7%増加し33ギガトン(Gt)となった。石炭火力発電による排出量は10Gtを超え、全排出量の約3分の1を占めた。

エネルギー需要の増分のうち約20%は冷暖房の需要が高まったことに起因しており、これは一部の地域における冬季や夏季の平均気温が過去の記録以上に低かったり高かったりしたためという。冬季の寒波が暖房需要を活発化させ、夏季の気温上昇が冷房需要を押し上げたとしている。

やはり重要なのはエネルギー消費の効率化をさらに推進することだ。

■Eメールなどによる電力消費とカーボンエミッション

IT産業に関わる電力消費について興味あるレポートを見る機会があった。

技術進歩というものが環境問題を解決する方策を提供するということは確かだが、一方ではそれが電力消費を増大させ、結果として地球温暖化ガスの排出を増加させることになるというものだ。例えば、1メガバイトのEメールを一通送るのにどれだけの電力が消費されるだろうか。25Whの消費であって、炭酸ガス20グラムを排出することになるそうだ。Eメールの利用は、時間、距離などの障壁を乗り越えることでエネルギー消費を抑制してはいるが、それ自体がエネルギーを消費し、それが急増すると、化石燃料による発電に依存せざるを得なくなるということだ。ある研究によると、今年は2,930億通のEメールが一日に世界で発信され、それが消費する電力はほとんどが化石燃料由来になるらしい。

スマートフォンのアプリも、蓄電池を急速に消費し、その充電に電力が必要となる。特に、ストリーミングの電力消費は大きいようだ。このようなデータのやりとりを媒介するのはサーバーで、これも電力を消費する。データセンターの電力消費が急増しているのが環境を汚染する可能性があるとして、大手のデータセンターユーザー、例えばAmazonなどは、できるだけ再生可能エネルギーで運用する方針で経営している。だが、現在見られる世界のエネルギー消費から見ると、情報通信技術関連での温暖化ガス排出は2013年の2.5%が、2020年には4%に上昇するという結論をフランスのプロジェクトが出している。これは旅客機(2018年のカーボン排出量の2%)よりも多く、自動車(8%)に近づこうとしている意味だとする。

グリーンピースはデータセンターの集積に警鐘を鳴らしている。IT業界はここ10年来、データセンターの消費電力を再エネに切り替えようとしているが、それよりもデータ処理量の方が増加速度は速いようだ。特に最近顕著になってきた映像の伝送量が増えることがこの傾向を助長している。ビデオのインターネットを利用した送受信が、データセンターと個々の端末の電力消費を押し上げているとのこと。問題は個々のユーザーは、自分のインターネットの利用がCO2排出に関わる可能性があるということに気が付かないということだろう。

このような情報技術はこれから発展途上国でも拡大することから、化石燃料による発電量を増大させるということも関係する。難しい課題を突きつけられたように思える。

■プラスチック使用からの脱皮

当初、プラスチックによる海洋汚染が報じられてから、当初、プラスチック製のストローを使用するのを回避する飲食産業が拡大した。だが、ストローはいわばシンボルのようなもので、続いて、プラスチック自体の再利用や、他の環境汚染を増やさない素材へ転換する企業の動きが最近報じられるの多く見るようになった。

その一つは、製紙各社はストローやプラスチックフィルムに匹敵する性能の包装紙などを開発中だというもの。出版物や印刷物の減少で紙の需要は右肩下がりだったが、環境負荷が高いプラスチックの代替素材として注目を集めるようになり、世界的な「脱プラスチック」の流れの中で、包装材や容器の市場が激変する可能性も出てきたと報じられている。2018年7月、米スターバックスがプラスチック製の使い捨てストローを20年までに世界の全店舗で廃止すると宣言した。スターバックスの発表後、米マクドナルドやレゴランドを運営する英テーマパーク大手マーリン・エンターテイメンツなどもストローを紙に切り替えた。日本でも同様の動きが顕著になっている。こうしたなか、プラスチックに代わる素材として期待を集めているのが紙。素材業界が商用化に向けた開発を進める中で、日本製紙は紙容器などの製品を相次いで打ち出している。ストローについても、現在はプラスチック製に比べて割高になる製造コストの削減に取り組んでいるという。今後は水まわりでも使える紙製品の商用化も目指している。ただ、全てを紙に置き換えることはかなりハードルが高いに違いない。

次の具体例は、サントリー・ホールディングが、すべてのペットボトルを再生するシステムを確立しようとしているというものだ。2030年までに新たな化石燃料を投入せず、再生PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂と植物由来の素材を組み合わせて代替、循環させるようにする。同社は現在販売している飲料ボトルに使用済みペットボトル由来の再生PET樹脂を1割ほど使っているが、この割合を30年までに6~7割に高め、不足分を植物由来の樹脂で補うとのこと。再生PET樹脂については、使用済みのボトルを粉砕し、異物を除いて容器を効率よく作るシステムを協栄産業(栃木県小山市)と共同開発しており、25年までに再生設備を全国数カ所に増やす。ただ、このように使用済みボトルを確実に回収できるような流通システムが定着しなければなるまい。ビールの空瓶を業界として回収するモデルを作っていたが、ガラス瓶がスチールやアルミ缶に移行したために、ゴミとして捨てられたのを回収する方向に向かい、缶の回収効率は大きく下がっているはずだ。原料として再利用する技術は確立出来るだろうが、確実な回収をどのように定着させるかが課題となる。

資源の再利用には、必ずこの回収システムの確立が必要だが、それには消費者の意識付けと行動への移行が社会システムの中に組み込まれるようにならなければ効果を生むことは難しいし、時間がかかるだろう。業界全体として消費者も取り込んだ社会システムを具体化することが鍵となると思っている。