報道によると、経済産業省は今夏をメドに策定するエネルギー基本計画に、将来的な原子力発電所の建て替えを盛り込まない方向で調整に入ったということだ。原発建て替えの明記を見送ることで、2050年の脱炭素社会の実現に向けた道筋が描きにくくなる。
法律上の稼働期間の上限である60年に達する原発が今後出てくることから、政府として建て替えを進めていく方針を明記し、将来にわたって原発を活用する姿勢を示せるかに注目が集まっていた。東電福島第1原発の事故後の14年に策定したエネ基本計画で、原発建て替えの表現を削除して以来、建て替えの記載は消えたままとなっている。判断を先送りし、3年後に計画を見直す際にあらためて判断するという。
しかし、原発をどのようにして建て替えるのだろうか。まず現在ある設備を撤去しなければならないが、その中心部は放射能を帯びた設備が多いだろうし、それをどこに持って行けるかは分からない。事故を起こしてはいないとは言え、また、一部は再利用するかも知れないが、新設計の設備を建てられるようになるまでに10年はかかるだろう。使用済み燃料も処理しなければならないが、それを受け入れるところもまだ決まっていない。原発の建て替えは、通常の火力発電設備の建て替えとは全く異なることが認識されていないように思える。
もし建て替え計画が検討されるとすれば、その具体的な計画内容を詳細に示さなければ、ネットゼロ社会に向けたものとして間に合うものかどうかの判断は出来ないだろう。いま建設中の原発しか今後の発電容量として算入することはできないと思っている。
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