*木質バイオマス発電が動いていない
木質バイオマスの利用には必ず流通が円滑に、ということは、バイオマス燃料が必要量確保できて遅れなく入手できることが必要だ。前から容量の大きな発電に木質バイオマス燃料だけを利用するのは、国産の物を確保するのが難しいし、輸入燃料を使うと、海外で環境問題を起こしている可能性があるし、海外依存になるという致命的なことになる、と心配していた。これがいま現実化しているようだ。
報道によると、燃料の確保が難しく、政府の固定価格買い取り制度(FIT)の認定を受けた案件の8割以上が稼働していないという。天候に左右されない安定した再生可能エネルギーとして期待がかかるバイオマス発電だが、人手不足もあって国内の森林資産を生かし切れず、燃料の輸入頼みに拍車がかかっている。
政府が掲げる2030年度の電源構成の計画では、バイオマス発電は全体の4%程度を占める。同7%の太陽光よりも低いものの風力(同1.7%)を上回る。国内の林業や製材業で生じる木材を有効活用できる安定的なエネルギー源として期待されている。だが、これは期待に反した方向に向かっているようだ。18年3月時点で政府がFITで認定しているバイオマス発電の容量は約740万キロワット。当初、買い取り価格が1キロワット時当たり24円と高く設定されたため、地場企業から大手電力まで多くの企業が参入。ただそのうち稼働したのは約130万キロワットと2割弱にとどまっている。一方、木質ペレットの輸入量は5年間で約6倍に増加しており、「自給率」は約2割に低下した。ただ輸入燃料を確保できている事業者は一部に限られると見られ、多くが稼働にたどり着けない状態が広がっているとのこと。
地域の間伐材などを利用する小規模な物を除いて、規模の大きい木質バイオマス発電は日本では成り立たないと考える必要があると思える。木質ペレットの場合、国産の価格は海外メーカーの工場で生産される輸入品の2~3倍とされる。バイオマス発電ではコストの約7割を占めるとされるだけに、発電事業者が割高な国産燃料を使う動機が働きにくい。
ここで立ち止まって政策的にも考え直すべき課題だろう。