風力発電は、刻々変わる風の力を羽根で受けて、それに繋がる発電設備を駆動するのだが、そこには多数のギアやカムの機構が組み込まれている。物理的な機械装置だから、メンテナンスが欠かせないが、その頻度を下げることができれば、発電コストを引き下げることができる。三菱重工業は2月5日、動力伝達機構にデジタル可変制御方式の油圧ドライブトレインを採用した風力発電設備(出力7千キロワット)の陸上実証試験を、英国で開始したと発表したということだが、このギアなどの機械的な部分を大きく減らす効果があるもののようだ。デジタル可変容量制御を行う油圧ドライブトレインを持った風力発電設備の実証試験は、世界初であり、三菱重工は、この陸上実証試験の結果を踏まえ、福島県沖で実施される浮体式洋上ウインドファームの実証研究事業に、油圧ドライブ式大型風力発電設備を供給する。商用化にめどがつけば、ベスタス(デンマーク)との合弁会社であるMHIベスタスへ新型油圧ドライブトレインを供給することも検討する。この方式を採用した風力発電設備は、風のエネルギーを油圧に変換し、一定の回転数で発電機を回すため、増速機やインバーターを必要としないことが特長のようだ。この新型油圧ドライブトレインは、三菱重工が2010年に買収した英国ベンチャー企業のアルテミスが持つ油圧デジタル制御技術をベースに開発したものだから、三菱重工独自の商品開発ができることになる。これが商品化すれば、世界の市場に大きな影響を与えるものとなると期待される。