効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

スマートグリッドの国際規格

訪日中のスティーブン・チュー米国エネルギー長官が米国が推進しているスマートグリッドの開発について、「技術の規格を国際的に統一すべきだ」と強調したと報じられている。スマートグリッドという言葉が日本ではよく次世代送電網と表現されているが、この言い方自体が国際的な概念から外れたものになっていると思う。スマートグリッドは、発電から電力消費の末端までを総合した概念であるが、次世代送電網には需要へ対応するという考え方が抜け落ちている。それだけでも日本の電力事業は、ガラパゴスになっている。ガラパゴス自体プラスともマイナスとも評価をするのは難しいが、それを世界に向けてマッチングさせようとするときに全く身動きできなくなる可能性がある。
今回のチュー長官の発言は、老朽化した送配電網、膨大な自然エネルギーの導入によって不安定さが増大する送配電制御、発電・送電能力の不足を需要の管理で補おうとする米国が取り組むエネルギー供給システムの総入れ替えを、世界の市場に米国のビジネスを売り込む機会にしようとする意図が強く感じられる。日本の送配電網は極めて安定し、それ自体優れたものではあるが、その完璧さの故に、これから世界で実施されるスマートグリッドの制御システムやそれに関わる機器のスタンダードと整合性をとるのが極めて難しくなる可能性がある。欧米の電力事業は、それぞれに相性が良いIT企業と連携を進めている。そこには新しいアイデアを出すベンチャーも無数に出現していて、例えばGEやマイクロソフトといった既存の大企業も、自分に不足する部分であれば躊躇なく買収したり、合弁したりするなど動きが速い。その中に多くの電力事業が参画している。そこに日本企業、特に電力事業が、きめ細かな素早い動きをしているようには感じられない。中国や韓国などの方がはるかに機敏な動きをしている。
米国はまった更地に新規格を設定しようとしている。それに日本がどれほど参入できるだろうか。日本の電力事業は自ら組み上げた送配電規格を簡単に変えることには躊躇するだろうし、その規格を世界に売り出すだけの余裕もないのではないか。10年経ったときに日本の送配電系統が時代遅れにならなっていないように願っている。