効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

赤潮で育てるアサリ

毎日新聞が報じるところによると、山口県水産研究センター(山口市)が、赤潮を用いたアサリの稚貝育成に取り組んでいる。漁業被害をもたらす「海の悪役」をエサにしてアサリを育てるという大胆な発想で、全国でも初の試みだという。遠浅の海浜がどんどんなくなり、海水の汚染もあってアサリが自然に育つ環境がなくなっているいま、各地でアサリの人工種苗の研究が進められている。そのためには稚貝に餌を与える必要があるが、エサが少なくなる梅雨時期の成長鈍化が長年の課題だった。アサリの全国の漁獲量は、ピークだった83年の16万トンから08年は4万トンまで減少している。山口県ではさらに深刻で、08年は全盛期のわずか0.1%の10トンに落ち込んだ。
稚貝育成に用いられるのは、県内で発生する赤潮の主要な原因である「ヘテロシグマ・アカシオ」。九州南部で被害が相次ぐ「シャットネラ」よりも毒性が比較的弱く、梅雨期でも培養できる。山口県内では真夏を除いた5〜11月に発生しやすく、1ミリリットルあたり5000個以上で注意報が発令される。今シーズンはヘテロシグマによる警報、注意報が県内の瀬戸内海側で計3回発令された。赤潮は養殖魚が死ぬといった被害を出すが、アサリなどの二枚貝はむしろよく肥えるといった通説があるのにセンターが着目したという。昨年8〜11月、センターは科学技術振興機構の助成を受け、九州大大学院と共同試験を実施。1ミリリットルあたり3000〜7000個を含む赤潮を施設の稚貝に与えると、自然の海で育てるのと同程度のたんぱく質を含有するようになり、活力を示すグリコーゲンは従来の飼料を使った場合より約3倍高いことも確認された。1種類の餌でアサリが元気に成長することが分かったのだ。エサとして活用するには、定期的に十分な量を確保するため、赤潮を濃縮し、粉末化することが欠かせない。有毒な排水の処理も必要だが、試験ではムール貝を使った排水の無害化にも成功しており、実用化に向け段階的に研究を進めている。
油成分を多く含む藻類をバイオ燃料に利用するのに興味があったが、このように悪役の利用ができるのはさらに面白い。利用の仕方次第で毒にも薬にもなるということだ。