効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

燃料電池シンポジウム

朝から終日燃料電池の話ばかりを聞いていた。第16回燃料電池シンポジウムがタワーホール船堀で開催されたのにわざわざ奈良から出向い参加したのだ。勿論参加料もいるし、さっきまでいた懇親会も費用が要る。だが、この種の情報収集の場が関西にない。自分が1980年前後に携わった燃料電池の開発が、やっと日の目を見始めたことを実感し、その情報を海外にも発信するためにやってきたのだ。ここ数年毎回参加している。燃料電池開発情報センターが主催だが、ここの会長は昔一緒ににリン酸型燃料電池の開発で苦労した片岡宏文元東京ガス副社長だ。今日も久しぶりにお目にかかれて良かった。
様々な燃料電池の開発を巡るレポートを聞いたが、その中でまだどうなるか分からないが面白そうなものがあった。燃料電池のタイプの一つに固体酸化物電解質燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell)がある。これがこれからの本流になると思っているのだが、まだ実用化にはもう少し時間がかかりそうだ。そのSOFCの燃料に石炭ガスを使おうとする試みが産業技術総合研究所で行われている結果が報告された。石炭は化石燃料としてはもっとも埋蔵量が多い。だから、いかに再生可能エネルギーの利用が進むとしても、ここ当面化石燃料に頼らないといけないとすれば、石炭が最後の頼りになる。ところが石炭は従来型の発電の燃料に使うと、地球温暖化ガスである二酸化炭素化石燃料の中ではもっとも多く排出する。ところが高温で作動するSOFCの燃料に石炭をガス化したものを使うと、発電効率が高いのに加えて、一酸化炭素も燃料となるために、二酸化炭素の排出が激減する。いわば、二酸化炭素を捕捉しているような形となる。
ところがいままで石炭のガス化を目指した技術は、できるだけ熱量の高いガスに変換することを目指してきたが、SOFCに使うためには水素リッチな、ということは熱量の低いガスにする方が有利になる。まずそのようなガス化技術をこれから開発しなければならない。そして、そのようなガスがSOFCでうまく使えるかを実証しなければならない。石炭はいわば地球上にあるものが全部含まれているといっても過言ではないほどの混合物だ。だからガス化してもその中には不純物がごまんとある。それを除去するにはまたエネルギーが要るから、簡単なクリーン化だけでSOFCに使えるかを産総研がテストしたのだ。水とフィルターを通したものやフィルターだけを通したものをSOFCの単セルに使ったら、一応発電するという結果が出ている。水とフィルターを通したものは3時間ほど発電して止まったようだが、それだけでも大したもの。このような勇気ある試みを続けてほしい。石炭火力発電所からの排ガス内にある二酸化炭素をトラップして地下に埋めるよりも有効かもしれないからだ。