効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

石炭のケミカルループ燃焼

電気新聞の報道によると、石炭を燃料に発電所から二酸化炭素(CO2)を回収しやすい技術として、欧州を中心に「ケミカルループ燃焼」への関心が高まっているそうだ。金属の酸化・還元反応による炎を伴わない燃焼で、かつて日本が研究を先導したが衰退。最近になり欧米で実証プラントが建設されるなど、あらためて脚光を浴びつつある。発電所のCO2回収・貯留(CCS)が義務化されれば経済性も改善するため、将来の新設における選択肢の一つとして動向が注目される。金属の化学反応での発熱反応を使えば確かに炎なしで高温を作り出すことは理屈として可能だとは思う。
ケミカルループ燃焼では金属酸化物を石炭や天然ガスといった燃料で還元し、CO2と水を発生させる。還元された金属は空気を吹き込んで再び酸化し、繰り返し(ループ)反応させるというもの。反応からは最大1千度超の熱が生じ、タービンを回して発電できると説明されている。日本で20年以上前に東京工業大学の石田愈・名誉教授が本格的な研究を始め、「ケミカルループ燃焼」と名付けた。東京電力と共同で基本特許を取得しているそうだ。この反応が、CO2分離の容易さで再注目されるようになっている。このほどドイツのダルムシュタット工科大学で1千キロワット級の実証プラントが完成、来年には石炭燃焼の実験を始めるという。このプロジェクトにはメーカーのアルストム、電力大手のバッテンフォールも参加している。現時点では反応のカギとなる酸化金属の種類や粒子の形状、コスト面に課題があり、プラント単独の発電効率はIGCCやA―USC(先進超々臨界圧)に及ばない。
この情報を知って、必要が新しい技術開発の種を発芽させるのだなと感じた。現状では解決すべき課題は多いかもしれないが、化石燃料としてもっとも賦存量の多い石炭の利用から出るCO2を効率的に除去できるとすれば、地球温暖化抑制に大きな役割を果たすだろう。発電効率の差がどのくらいあるのかにも左右されるかもしれないが、世界プロジェクトとして是非開発を推進してほしい。