効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

雑草から汎用樹脂

今日の日経新聞に、地球環境産業技術研究機構がホンダ技術研究所と共同で、雑草を原料にして汎用樹脂のポリプロピレンを合成する技術を開発したと出ている。ポリプロピレンは用途の広い代表的な合成樹脂で、現在は石油から精製された原料から製造されている。もしこの技術が量産プラントにまで持って行ければ素晴らしいが、3〜4年後が実用化の目標だというから、かなり期待できるのかも知れない。
植物に含まれる繊維(セルロース)を糖に分解した後、遺伝子を組み換えた大腸菌などの微生物を利用してアルコールに一種であるプロパノールを作り、これを使ってポリプロピレンを合成する。雑草2〜3キログラムからポリプロピレン1キログラムができるというから、その生産性は高いと言えるだろう。石油資源の節約、ひいては地球温暖化防止に果たす役割が期待できる。
バイオマスの利用には微生物の役割が極めて大きいと感じさせられる。私が関与している畜産廃棄物や食品廃棄物のメタン発酵にも、メタン発酵菌がいなければ、メタン合成に膨大なエネルギーが必要となってしまう。このことを教えられたのは10年前にジャニン・ベニウスが発表した著作「バイオミミクリー(Biomimicry)」からだった。E Sourceの会合に出席したときに、ディナーの招待スピーカーとして講演したのを聞いてこの本を買い求め、帰国の飛行機の中で読んで生物の力の偉大さに驚かされたのを覚えている。彼女を紹介したのはロッキーマウンテン研究所のエイモリー・ロビンス博士だった。エイモリーに紹介を頼んで翻訳させて貰いたいなと思ったが、生物学、生理学、医学など広い範囲の知識と専門用語の使用が必要だったために断念したことも思い出す。
貝は貝殻を作るのにそれほどのエネルギーを使っているわけではない。しかし、人間が同じ成分のものを作ろうとしたら、高温高圧のプロセスを必要とする。しかも貝殻の美しいデザインを工業的に作ることは難しい。人間の歯を見ても、これほどのものをまだ人間は合成できていないし、似たものを作るにも膨大なエネルギーを要している。今後エネルギーの消費を抑制するためには、生物(バイオ)が生きるために行っている極めて効率の高い合成反応、情報伝達方式などを真似る(ミミック:mimic)技術開発が鍵となる。これは、いまでも覚えている記述のほんの一部であるが、最近のバイオ技術の開発動向を眺めていると、もう一度この本を読み返す必要があるなと思っている。日本語に翻訳されてはいないようだ。バイオミミクリーという言葉は日本でも使われているようだが。