原子力発電が稼働すると、使用済み核燃料が出る。発熱するのを冷やしながら保管するために、水の入ったプールに納める。この使用済み核燃料は、中に含まれるプルトニウムを抽出する再処理をして、再び燃料として使えるように処理することになっているが、その再処理プラントとして青森県の六ヶ所村で建設中の設備が、故障続きでまだ一度も稼働していない。1993年に着工し、本来ならとっくに稼働しているはずなのだが、次々に不備が出ているためで、使用済み核燃料の処理はフランスに依存している。だが、そのフランスで、その再処理工場の新設に住民が反対し、処理能力を増やすことができない状況にあると、毎日新聞の記事で知った。
フランス北西部、コタンタン半島にあるオラノ社(旧アレバ)ラアーグ再処理工場。1966年の設立以来、フランス国内のほか、日本を含めた外国からの使用済み核燃料を再処理し、原発で再利用するウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の原料となるウラン、プルトニウムを抽出してきた。仏国内有数の原子力関連施設が集中するこの地では、2011年3月の東京電力福島第1原発事故後も、住民の原子力への支持は揺らがなかった。そして今、ロシアによるウクライナ侵攻が引き起こした資源価格の高騰や気候変動対策への意識の高まりが、温室効果ガスの排出量が少ない原発の再評価を促している。
しかし、原発に追い風が吹く中、コタンタン半島で、かつてない大規模な抗議運動が起きている。きっかけは、再処理工場の隣接地にフランス電力(EDF)が新たに計画した使用済み核燃料などの貯蔵プールだ。仏国内の原発から送られる使用済み核燃料が蓄積し、ラアーグ工場内の既存の貯蔵プールが満杯になりつつあるためだ。マクロン政権は昨年2月、原発6基の新設を発表しており、事態はさらに深刻化しそうだ。
昨年6月18日。コタンタン半島の中心都市、シェルブールで約800人の住民が新貯蔵プールの計画中止を求めるデモを始めた。抗議運動は今も続いている。EDFにとって、この地での抗議運動は想定外だった。運動に参加する教員のティボー・カルムさん(29)は言う。「私たちはこれまで核のごみを受け入れてきた。だが今後、永遠に受け入れるつもりはない」。現在、ラアーグ再処理工場にある4カ所の貯蔵プールの容量は計約1万4000トン。既に使用済み核燃料約1万トンが貯蔵されており、現在のペースでは30年ごろに満杯になる計算だ。このため、EDFは隣接地に面積2万平方メートルの新貯蔵プールを建設し、原発から出る使用済み核燃料6500トンを収容する計画を立てた。24年に着工し、34年の完成を目指す。
この状況が続くと、日本は使用済み核燃料の再処理を依頼することが出来なくなるかもしれない。核のごみが蓄積する原因の一つには、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の破綻がある。フランスは当初、効率の良い高速炉での再利用を半永久的に続けることを目指したが、トラブルなどで計画が頓挫。高速炉の代わりに通常の炉でMOX燃料を使うプルサーマル発電を続けている。だが、ラアーグで抽出したプルトニウムなどをMOX燃料に加工する南部マルクールの工場はトラブルで稼働率が落ち、以前は年平均約110トンのMOX燃料を生産していたのが、21年は関西電力から受注した7トンを含めて計51トンにとどまった。このため、MOX燃料への加工を待つ使用済み核燃料がラアーグにたまっていく。
21年末現在、ラアーグにはプルトニウム80トンも保管されている。そのうち日本からのものが16・7%で、83%を占めるフランス国内分に次ぐ。また再処理過程で生まれた放射性廃棄物の大半は日本に送り返されたが、一部は「日本側の事情」(オラノ社)でラアーグに取り置かれている。
日本はフランスに使用済み核燃料の再処理が依頼できなくなる可能性もあり、一方では六ヶ所村の再処理設備の稼働の目途は立っていない。貯蔵用のプールも満杯になる可能性もあり、その時には新たなプールをどこかに作らなければならない。それが不可能に近いのが現状だから、これが原因で原発を止めざるを得なくなる可能性もある。
ご一読ください。クリックするとAmazonに繋がります。
家族の一人がやっている猫、鳥、犬などをモデルにした手作りアクセサリーのご紹介。
https://www.creema.jp/listing?q=plus+me+accessory&active=pc_listing-form