効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

下水と海水で水素生産

これを報じる記事の標題を見たとき、そんなことがあるはずがないと思った。しかし、現実に実証試験が行われているようで、山口大学山口県周南市日本下水道事業団などと都市型水素発生システムの実用化に取り組むとのこと。下水と海水の塩分濃度差を使って電気を生み水素生産のエネルギー源とするもので、生産コストや設置面積を太陽光発電などよりも大幅に抑えることができるらしい。2020年の装置完成を目指して今夏にも実験プラントを設け、沿岸部の自治体などに採用を働きかけるとのことだ。濃度の違う液体から電力を得る「逆電気透析」の原理を用いるもので、山口大大学院理工学研究科の比嘉充教授の研究がベースになっている。国土交通省が進める下水道の新技術開発プロジェクト「B―DASH」の一環として、約3000万円を投じて周南市の徳山東部浄化センター内に実験プラントを設けると報じられている。電位差があることは理解できるが、それが水素を利用可能なほどの量を生産できるのだろうか。実験プラントは約40センチ角の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を相互に200枚程並べ、その間に下水処理水と海水を交互に流し込むという構造のようで、それほど大掛かりなものではない。昨年、福岡県で行った実験で水を電気分解し水素を生成するのに必要な1.23ボルト以上の電圧を得ることができることを確認したと報じられている。今回の実験プラントが想定通り稼働すれば、1日3万トンの下水処理水で年に約270万立方メートルの水素が得られるという。これは燃料電池車2800台分の燃料をまかなえる数字だ。生産コストも下水、海水を使い、外部電力もほとんど使わないため1立方メートルあたり36円程度と、太陽光の3分の1、風力や外部電力の半分程度で済む。海が近い都市であれば全国どこでも応用できる。廃棄物の有効利用としては極致のようなものだと思う。コストはイオン交換膜で左右されるだろうし、生産される水素をどのように利用するかにもよるが、海外の発展途上国にも応用できるものとなるかも知れない。