蓄電池の性能向上を目指した技術開発の進展は目覚ましいものがある。電気自動車(EV)動向距離は飛躍的に上がるだろうし、プラグインハイブリッド車(PIHV)も電気で走る距離が長くなるだろう。これを如実に示す事例が報じられている。電気自動車だけでなくスマートフォンなどの電源に幅広く使われるリチウムイオン電池の電極を改良することにより、電池の容量を4〜5倍に増やす技術だ。リチウムイオン電池はリチウムイオンが電解液を通じて正極と負極の間を行き来することで充放電を繰り返す。正極にレアメタル(希少金属)を含むコバルト酸リチウムなどを使っている。産業技術総合研究所は電極の金属と強く結合させることで克服し、関西大学は電極の構造を工夫し、問題を解決した。硫黄は電気を多く蓄える性質があり、電極材料に向く。希少資源でもない。硫黄を微粒子状に加工し、表面積を増やしたうえで正極に活用する研究などが進んでいる。ただ充放電を繰り返すと電解液に溶け、電池の性能を落とす課題があった。産総研の栄部比夏里上級主任研究員らは、正極に使う金属と硫黄の微粒子を強く結合させる技術を開発し、この問題を解決し、電池の容量を大幅に上げることができたという。5年後の実用化を目指しているということだが、その頃EVの普及率はどのようになっているだろうか。燃料電池自動車(FCV)の普及との競争が激しくなっているかもしれない。