家庭用に向けた蓄電池の市場が拡大しているのは面白い現象だ。当初、停電が起こるかもしれないという非常事態対応として自己防衛的に買う人があると受け止めていたが、最近の動きはそうではなさそうだ。屋根取付の太陽光発電の発電原価が急速に下がり、家庭用燃料電池のエネファームの設置が増えることから、電力市場が完全自由化された時に、電気を売ることも視野に入れた消費者が出現しているようだ。あらたな家庭用蓄電池販売事業者として、伊藤忠エネクスは3日、エヌエフ回路設計ブロックが開発・商品化した容量7.0キロワット時の家庭用リチウムイオン蓄電システム「エネパワボS」を総販売元の伊藤忠商事から供給を受けて、月内に販売開始すると発表している。希望小売価格は240万円(税抜き、工事費別)で、伊藤忠エネクスホームライフの販社を通じ、今後5年で1万台の販売を目指すというから、他の事業者の計画も含めると、大きな拡大をする気配だ。この商品は、家庭での1日の消費電力の約6割をまかなうことができる。分電盤と接続する系統連系方式のため、停電時でも普段通り家中の電気製品を使うことができ、蓄電システムが停電を検知すると、自動で家庭内に電気を送るため、コンセントをつなぎ変えたり、スイッチを切り替えたりする必要がない。制御を工夫すれば、住宅が電気を売るミニ発電所となっていくかもしれない