中国がネオジウムなどレアアース(希土類)の主たる産出国であるために、政治的にその出荷動向が利用されることがある。レアアースを使わなければ、強力な磁石が作れないために、海外への依存度を下げるリサイクルをしようとする技術開発は行われていた。しかし、その効果がなかなか出てこなかったと聞いていた。そこへ、東芝が大きな一石を投じたようだ。同社は産業用モーターからレアアースをほぼ全量取り出す技術を開発したと報じられている。産業用モーターは駆動力を高めるために磁石にレアアースを多く使っている。これまでは分解や回収が進んでおらず、多くのモーターは処理費を払って廃棄していたのだが、東芝が新しい回収技術を確立したことで産業用モーターのリサイクルが広がる可能性がある。新たに開発した手法は粉じんや廃液を出さずに純度の高いレアアースを回収できるとされ、モーターから取り出した磁石を、ナトリウムなどを溶かした特殊な液体に浸し、電気分解してネオジムなどのレアアースを効率よく取り出す方式だ。例えば230キログラムのモーターの場合、ネオジウムなどのレアアースを約2キログラム取り出せる。「鉄や銅などの素材も99%再利用できる」と東芝は述べている。15年度にも東芝製のエレベーターに使っているモーターを中心に回収を始めるが、年間で3000台の回収を見込んでいる。これから普及する電気自動車のモーターなどにはレアアースが不可欠であるだけに、レアアースの回収が効率的にできるのは極めて重要なものとなる。レアアースを使う量の削減技術の開発も並行的に行われなくてはならないだろうが。