天気も良く快適な日和だったので、散歩に出かけた。その途中、いつもなら特に注意もしない電線や電柱を見ていて、昨日かその前かに大きく報じられた電力会社の大赤字のことを思い出した。原発が全部止まれば必然的に化石燃料の使用を増やさなくてはならないから、経費が大きく膨らんで赤字になるのは当たり前のことだ。だが、赤字の額を抑えるために、投資は延期されたり中止になったりするだろう。その中には、送配電系統の品質維持のために行われる修理、改良、新設は、当面緊急的に必要なものを除いて全部後回しになるものがほとんどとなるということが頭に浮かんだのだ。電線はいつも引っ張られているから年を経ると切れやすくなる。変圧器は年々変圧効率が低下する、ということは発熱が増えることだから、劣化速度が速くなる。電柱も古くなると折れるかもしれない。このような送配電系統の品質劣化を食い止めるために、電力会社は長期の計画で取り替えなり修理をしてきた。これが延期される事態が長期化すると、これまで世界に誇ってきた電力供給の安定性が大きく損なわれる可能性が出てくる。これから予想される計画停電を勘定に入れなくても、全国平均の停電時間がじりじりと上がることになる。一度遅れた系統投資を元に戻すのは至難のことに違いない。発電能力が需要に追いつかなくて停電するのではなく、送配電網が損傷して停電するようになるかもしれないと感じたのだ。日本の優れた電力供給用の資産を損なわないようにしないと、これまでの投資も努力も意義を失いかねない。この側面の配慮が電力料金値上げについてもなされなくてはなるまい。