低温高圧の場所にメタンがあると、その分子が水の分子の中に入り込んでメタンを含んだ氷になる。これがメタンハイドレートだ。日本の太平洋岸の海底深いところに大量のメタンハイドレートが埋蔵されていることは確認されている。経済産業省はこの開発に関する検討会を開き、天然ガスとして産出するために試験に向けた掘削地点を愛知県の南方沖70〜80キロの海底にすることを決めたそうだ。地層の強さや断層がないことなどが採掘に適しているという。2012年2月に石油資源開発が担当して掘削作業に着手。海洋研究開発機構の探査船「ちきゅう」を使って計4坑を掘削し、1年かけてデータを分析する。13年1〜3月に海底と海面を結ぶパイプを設置して天然ガスの産出試験を始める計画になっている。天然ガスが実際に取り出せれば、海底からの採取としては世界最初のものとなる。
確かに地層の構造がしっかりしていることは重要だろう。穴を掘っていく地中に断層などがあってメタンが漏洩しないとも限らない。あるいは、地震が起きて断層がずれたりすると、そこへパイプが設置されていれば切断されることも考えられる。そうなると漏洩を止めることは難しいだろう。ただ、地下構造は人間にとって未知のことが多いだけに、対応する術がないような失敗や事故は起こさないようにしてほしい。
メタンハイドレートに関する興味ある別トピック。採掘した天然ガスを、海を隔てた遠くに運ぶのには液化してLNG船で運ぶのが普通だ。これに代わって、メタンハイドレートにして輸送する技術が日本で開発されつつあるということを知った。三井造船が開発中のもので、輸送時の温度もマイナス20度とLNGのマイナス162度と比べるとはるかに高いから、特殊な輸送船を準備する必要もない。LNGにするには引き合わない中小ガス田の輸送に適しているという。三井造船によると、輸送距離1000〜6000キロという中距離輸送に適しているそうだ。日本から6千キロ以内のお東南アジア近海には中小ガス田が多い。案外早く実プロジェクトになるかもしれない。