効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

節電社会の作り方―スマートパワーが日本を救う

これは友人が最近出版した本の題名である。彼の名前は加藤敏春。1990年代インターネットが米国で導入され始めた頃、駐サンフランシスコ総領事館で経済担当領事をしていて、シリコンバレーでどのようにインターネットが開発され社会を変えていったかを、通産官僚としてつぶさに調べ、その動きを日本にも持ち込もうと努力していた。その頃、同様な発想で動いている民間グループが日本にあった。シリコンバレーで極めて大きな成果を出したNPO、スマートバレー・インクにちなんで、スマートバレー・ジャパンと称したNPOだ。その趣旨に賛同して自分も参加していたことから、彼と知り合いになったのだ。
福島原発の事故後に起きた電力不足。それへの対応策として日本へのスマートグリッドの導入が大きな関心を集めるようになった。彼は事故のずっと以前から、スマートグリッドは、インターネットに勝とも劣らぬ変革を社会に与えるはずだと考え、自らスマートプロジェクトという組織の代表として、啓蒙だけでなく関連企業を引っ張り込んで具体的な社会変革活動をしてきたのだ。昔通産省(現在の経産省)のお役人だっただけあって人脈が広く、その理論は説得力があり行動力もある。エコポイントを提唱して実施させたのも彼だ。
そして、単なるスマートグリッドの概論ではなく、いま日本が直面している電力不足へ短期的に対応する方策、中長期的に目指すべき施策をきめ細かく述べた本書を今月出版した。スマートパワーがこの苦境を脱する鍵だとし、具体的な方策を多面的に紹介しているが、日頃自分が力説している効エネルギーも語っている。やみくもにエネルギー消費を減らそうとするのではなく、エネルギー消費の効率を上げることで、自然に日本全体のエネルギー消費量が下がるように社会全体が知恵を働かせなければいけないと主張している。
新書版だが簡単に読み飛ばせる本ではない。急に出現したエネルギー不足への対応には、スマートグリッドの導入が不可欠だが、それ以上に重要なものは、日本人の英知と創意工夫、熱意だとする彼の主張に同感し、ここで紹介する次第。角川書店から出ていて724円。この2倍の値が付いていてもおかしくない濃さがある。