効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

中国の電力事業と周辺諸国

夕刊に、中国がベトナムの火力発電所の建設を受注したとある。100万キロワットクラスの石炭火力。ベトナムには豊富な石炭がある。資金不足で電力需要の伸びに対応した発電所を作れなかったのを中国が支援した形だ。中国の輸出入銀行が必要資金の8割まで融資するというから、これは中国の国策として位置づけられていることは確かだろう。ベトナムはエネルギーを通して中国に支配されるようになるかもしれないと思っていたのだが、このような形で具体化した。ベトナムの電力供給網は中国のそれとつながっているはず。両国が相互の需要のずれを利用して相互補完するのは難しいことではない。
もう一つ、スウェーデンの電力設備メーカーであるABBのプレス発表によると、中国西南部にある水力発電所と上海の間約2千キロを結ぶ超高圧直流送電システムが、着工してから30ヶ月で、予定よりも1年早く運用を開始した。80万ボルトの送電線としては世界で最初のものだそうだ。その建設コストが4.4億ドルで送電容量は720万キロワットというから大規模なものだ。直流でしかも電圧をこれまでの40万ボルトから大きく上げたために、送電損失が大きく下がる。これを皮切りに、中国は同種の超高圧長距離送電システムを15本建設する。
中国西南部ベトナムと遠くはない。超高圧直流送電線をベトナムに延長することはおそらく長期的な周辺国取り込み施策の一つとして想定されているだろうと思う。タイ、ラオスなどもその対象になっているのではないか。直流を使って周辺諸国と連系すれば、送電網のトラブルが相互に波及するのを防止できる。ABBやジーメンスが中核の技術を提供しているが、いずれは中国が全てを取り込むことになるのは確実。日本の電力設備メーカーがアジアに市場を見いだそうとしても、中国の戦略的進出によって負けてしまうのではないか。おそらくこの中国の動きに危機感を持つのは米国とインドだろう。その意味でインドと日本が戦略的連携をとる方向に動く必要があると思う。
少し考えすぎか。