トヨタ自動車がこれから1〜2年でプラグインハイブリッド自動車を発売すると発表した。またいずれ電気自動車へも進出するだろう。この種の自動車には強力でありながら小型の電気モーターが必要となる。その場合温度が上がっても磁性が弱まらない磁石がなければ車を駆動するモーターの性能を発揮できない。そのような磁石には、レアアース(希土類)金属であるネオジウム、ディスプロシウム、テルビウムが不可欠である。ネオジウムは磁石の基本成分であり、後の二つは磁石の保磁力を増し、耐温度性を高めるものだ。駆動に使う電気モーターだけでなく、自動車にはすでに多くのモーターが使われている。それにもこのような希土類金属を使った高性能なレアアース磁石が使われる。
高性能磁石の要となるディスプロシウムとテルビウムという金属の鉱脈があり生産ができるのはほぼ中国だけだそうだ。この資源を中国は輸出を絞る政策をとっている。いままで高性能磁石の技術と生産は日本が先頭を走っていた。ところが日本の日立が持つ特許が2014年頃に切れることもあって、中国は粗原料を輸出するのではなく、磁石製造産業を国内に育てようとしている。日本国内には日立、信越化学、TDKがある。ところが中国には大手だけでなく中小の磁石製造メーカーがどんどん増えているという。技術開発も進められているために、従来日本が持っていた優位性が維持できるとは必ずしも言い切れない状況になっているという。電気モーター使用の方向に向かっている自動車メーカーにとっては、磁石の性能向上の技術開発すら中国に依存しなくてはならないかもしれない。
だから希土類金属のリサイクルが重要な課題となっている。最近報道されたように、日立製作所が、レアアース(希土類)磁石のリサイクル技術の開発を開始するのもその具体化だ。経済産業省の補助金を得て、ハードディスクドライブ(HDD)やモーターからレアアース磁石を分離・回収する技術を開発するとともに、使用済みのレアアース磁石を再生する技術の可能性を検証。リサイクル全体のコスト試算なども行って、13年をめどにリサイクル事業を開始する考えだという。廃棄されるHDDやモーターは多いはずだが、それをいかにリサイクルのルートに乗せるかがもっとも重要な鍵になるだろう。リサイクル技術が順調に開発されても、資源となる廃棄物の収集ができなければ事業としてなりたたないからだ。中国からのレアアース輸入にも制約があるとなれば、高性能永久磁石を国内で作れなくなる可能性がある。今後の動向が気になるところだ。