効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

燃料電池自動車

トヨタ、日産、ホンダの燃料電池自動車3台が東京霞ヶ関を11日午前9時頃出発して1,100キロ離れた北九州市へ12日夕方無事到着したようだ。この実証試験は石油産業活性化センターや日本自動車研究所など4団体でつくる水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)が実施したもの。途中で愛知、岡山で2回の水素燃料補給を受けている。一回の燃料補給での走行距離は500〜600キロとガソリン車並だが、水素を70メガパスカルという高圧で充填できる設備がなければならない。電気自動車の高速充電設備は、日本ならどこでも送電線はあるから、それにつなぎさえすれば設備の多数設置はそれほど難しいことではない。だが水素充填装置は、北九州市のように製鉄所の副生水素がないところでは、水素を製造しなければならない。その水素を作るには、都市ガスかLPG、あるいは石油系の燃料を改質しなければならず、その設備コスト自体がかなり大きくなる。しかも高圧水素だから、安全性についても十分配慮がなされなくてはならず、解決すべき課題は多い。しかも燃料電池自動車自体の製造コストも当面大きく下がるとは考えにくい。燃料電池自体が極めて高度な技術の集積でできているだけに、電気自動車のように電池の性能さえ向上させれば良いという単純さから見ると、実用的な段階までに持って行くのはかなりの難しさがあるように思える。
自分が過去に燃料電池開発に携わっているため燃料電池自動車を応援したいのだが、このままでいくと電気自動車、あるいはプラグインハイブリッド自動車に、実用化に関して負けるのではないかと懸念している。当面は水素を化石燃料から作るのだから、その時にエネルギー損失があり、高圧にするのにまたエネルギーを使い、固体高分子型の燃料電池発電効率は30数パーセントだから、総合効率は必ずしも高いとは言えない。排気ガスがきれいだというメリットはあるが、この対応はある程度までできているので、優先度が下がってしまうだろう。
いま事業仕訳が新政権の下で行われているが、この実証試験の継続がひょっとすると縮小の対象になるのではないかとまで思っている。