東京電力と東京大学が共同で、千葉県銚子市の南沖合に風況観測タワーを設置した実証研究を実施するということだ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した洋上風力発電等技術研究開発の一環で、東電などが約13億3千万円で受託した。今回の「洋上風況観測システム実証研究」では、実際に銚子沖で風況観測タワーを設置。今年8月から14年3月まで風況や波浪などを観測するほか、海洋構造物が環境に与える影響なども調査する。
洋上風力発電はいま世界的に設置が推進されようとしている。日本でもこのような形で具体化に向けた計画が出てきたのは嬉しいことだ。特に、日本の場合、海底から基礎を作ってタワーを建てる方式に適したところが、沿岸から近いところにしかないといわれている。すぐに深くなってしまうからだ。これからの主力は、浮体構造の上に風車を立てる方式になるだろう。この構造を決めるための資料も今回の研究で得られるのではなかろうか。報道によると、観測結果に基づいて、風況と波浪を予測する数値シミュレーション手法を高度化し、洋上での風況や波浪などの観測方法や観測タワーの設計構造に関する指針案なども作成する。このほか、洋上での生態系や海流、砂の移動などの変化を調査し、環境に与える影響を把握するようだ。
東京電力管内には陸上で風力発電に適した豊かな風が吹くところが少ない。東電以外のところに自分で風力発電設備を建設しても、その電力を自社管内にもってくるのが難しい。だからこのプロジェクトを始めたのだとは言わないけれども、最大の事業者が洋上風力を手がけようとしているのは歓迎すべき事だ。これをいずれ系統に連系させることになるのだが、海底の遠距離送電をするのか、このブログでも議論があった水素に変換するのか、など、関連する課題も今後解決しなければならない。風力発電が洋上にある場合、そこの海流を利用して潮流発電も可能になるかもしれない。そうすると風力発電の変動幅をある程度抑制できることにもなるだろう。