効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

膜の機能

1月12日の日経新聞の12面に、二つの記事がフィルムと膜という素材を使って合成などの化学変化を促進しているのを紹介している。
一つは、シックハウス症候群の原因物質として知られるホルムアルデヒドアセトアルデヒドを分解してアルコールに変えるフィルムの開発。フィルムは「リン脂質」という物質を含む高分子材料を使い、粉末にして分解酵素などと一緒に水に溶かした後、乾燥させて作るという。空気中のホルムアルデヒドなどと触れると、酵素の働きで分解する。ホルムアルデヒドからはメタノールが、アセトアルデヒドからはエタノールが作られて無害化される。同じ反応を水溶液中で行って反応が途中で止まってしまってアルコールはできないが、フィルム内の閉鎖空間では酵素が働くのに必要な補酵素が何度も繰り返して使われることで酵素の活性が維持されるためアルコールまで分解できるそうだ。
もう一つは、遺伝子を組み換えた微生物と超純水の製造などに使う膜を組み合わせて、植物から作る生分解性樹脂の価格を現在の半分以下に引き下げられるようで、3年後の実用化を目指すという。ポリ乳酸から作る生分解性樹脂は実用化されているが、価格が高いのと柔らかいフィルムにするのが難しかった。それがこの技術で作るコハク酸の価格はポリ乳酸の半分でできそうだし、柔軟なのでフィルムや袋にしやすいという。コハク酸は食用作物のでんぷんや植物繊維から作った糖をCO2と反応させて作る。できたコハク酸はイオン交換膜で濃縮、精製する。その時に地球環境産業技術研究機構が見つけた微生物の存在で不純物を大幅に減らすことができて除去の手間が省けるそうだ。不純物を微生物が分解するのだろうか。
この2つに共通するのは、プロセスの一部に生物の機能を取り込んでいることである。酵素は生物が生きていくのに欠かせないものだが、それを単独に取り出して膜に閉じこめたのだろうか、また微生物が不純物を分解するのも、分解生成物が微生物にとって必要なものだからか、不純物が有害だから除去しようとしているのだろう。この過程は極めてエネルギー効率が高い。人間が工学的にやろうとすると、高温・高圧でないと実現できないことも多い。これから生物の機能を解明していろいろの製造プロセスに取り込むことが、エネルギー効率を高めることになる。