効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

住宅用ソーラー

今日受信した日経BPのECO Japanメールの記事に、住宅用ソーラー本格普及の前にトラブルを防げ、という記事がある。現在日本で約38万戸に設置されているという住宅用太陽光発電システムは、いままで、個別に分散して取り付けられてきたが、一つの地域に数百戸単位でソーラーが取り付けられるケースがこれから出てくるだろう。そうすると街全体ではメガワットクラスの発電量となる。NEDOはこのような集中設置によって系統にどのような影響が起きるかを調べている。実験の場は、群馬県太田市の新興住宅「大砲光発電のまち」と呼ばれるところで総数553戸。その結果がこのメール情報で紹介されている。
取り付けられたソーラーからの発電量をその家で消費しきれなければ、それは系統に逆送されて電力会社が買い取る形になっている。この状態が街全体に起きれば、その地域に電力を供給する系統の電圧が上昇する。そして、電圧管理値の上限を超えることも考えられるために、一般のソーラー発電システムでは上限値を超えないように電圧上昇抑制機能を内蔵していて、電圧が管理値の上限に近づくと自動的に発電を抑えるように設計されている。ソーラーが点在している場合には、近隣で余剰分を使ってくれるから、まれにしか発電抑制は起きない。しかし、これが集中して同じ系統に連系している場合には、抑制機能が頻繁に作動しすぎて発電量が減ってしまうことになる。せっかくのクリーン電力を送り出すことができなくなるのだ。そこで今回の実証研究では「出力抑制回避装置」を開発し全戸に設置している。蓄電池が余剰分を蓄えて電圧上昇を抑制するということだ。その蓄電量は集中管理されていて、地域全体での発電効率を最適化している。
近くに工場があるために、平日は多少余剰電力が多くてもそこで消費されるために蓄電しなくてもすむことが分かったそうだ。これは当然のことで、どこかで電気を使っていればそちらに流れて系統の電圧上昇は小さくて済むという当たり前のことだが、それが今回の実証試験で分かったと書いている。ここで分かったことは、電力会社の系統は、発電所や変電所から需要地である住宅に向けて電気が一方通行で流れるのを前提に設計されているために、絶対に逆流が起きないようにという制約があって、そのために蓄電池という決して安くない、また新たな故障原因となるものを取り付けていることになる。これを逆方向に流れても良いように系統の設計を変更するのは難しくはないはずだ。このようなソーラー住宅はこれから増えるだろうが、そのたびに全てのソーラー設備に蓄電池が設置されるのは無駄だろう。系統がカバーする領域を広げて需要のバランスがとれれば、一部で逆流したものも、どこかの分岐点で順方向の流れに合流するはずだ。ここで分かるのは、電力会社は自社の管理する系統にはできるだけ手を加えたくないという発想のみで対応しているということだ。
しかし、これから電力会社に再生可能エネルギー比率を高める責任が飛躍的に大きくなるのは確実だから、それに備えて系統に逆流が起きることを許容する技術の導入を増やすことが望まれる。別に新規開発する技術ではない。やるかやらないかだけなのだが、いままで電力会社はいろいろな難癖を付けて逃げてきた。しかし、温暖化ガス排出抑制のためにソーラーを増強しようとしている今、この姿勢を変えるべきだろう。勿論それにはコストがかかる。しかし、そのコストと、ソーラー一つ一つに蓄電池を付けるコストを比較すれば、長期的に見れば系統で対応する方がずっと安くつくと思うのだがどうだろうか。