効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

電線の太さとエネルギー効率

電線工業界は、低圧電線ケーブルの導体サイズを約2.5倍にふやすことで、電力損失を6割低減できることを実証したと発表している。電線メーカーの工場内で、断面積38平方ミリメートルと100平方ミリメートルのケーブルを直列に接続し、1ヶ月間それぞれ電力損失量を測定したのだ。損失はそれぞれ60キロワット時、24キロワット時と差が出たという。また、実験では合わせて、100平方ミリメートルの導体を倍にすれば年間5万円の電気料金が節約でき、サイズアップによるケーブル価格の上昇分を約7年で償却できることも確認している。おそらく後者の実験結果の方が電気使用量の多い事業者にはよく分かるだろう。ただ、長さがどれくらいかが、発表の記事では分からないが、それも損失量に関係するはずだ。電線の長さ単位あたり抵抗値が同じであれば、長さとは無関係に損失比率は分かるから、損失が何分の一になるかはすぐに出る。
この実験は、当たり前のことを試してみたに過ぎない。電線には抵抗があって、その抵抗は電線の断面積に、ということは、半径の二乗に比例して増える。また、負荷がある程度以上かかる、すなわち電流が増えて発熱するとその抵抗は増加する傾向になる。38平方ミリメートルは、直径が約7ミリメートル。100平方ミリの場合には11.3ミリメートルだから、直径からするとそれほど大きな増加ではない。
直径が増えたときの価格増加はどの程度になるかは分からないが、もし重量比で上がるとすれば、100平方ミリの電線は38平方ミリの100/38=2.63倍の値段となる。そして抵抗値は2.63分の一となるために、電力損失は6割減となる。最初太い電線を高い値段を払って取り付けても、電力価格次第では電力損失を少なくできるために価格差を埋め合わせることができることは確かだ。
配線には規格がある。しかし、この規格はこの電流容量の時にはこれが最低必要だという安全の見地からの数字だが、それが業界基準になっていると聞いたことがある。ところがこの電線の太さを少し増やすだけで、電力損失を大きく減らすことができるのだから、設計段階で発注側が少し長期の運用経費を計算すると、電線を太くする方が得をするし、安全性も増加するし、有効に電気を使うことができて化石燃料の損失を防ぐことができるのだ。昔、タワーインフェルノという映画があった。高層ビルの新築祝賀パーティーで照明を一斉に付けたために手抜き工事の電線が加熱して火事が起きるというストーリーだったが、あらためて思い出した。
既存の工場でも、同じ太さの電線を平行して取り付けて両端を接合してやれば、抵抗は半分になるから、損失も半分になる。投資計算はすぐできるだろう。電線業界が環境を逆手に取った上手な営業拡大策を打ち出したと言える。
米国大統領にオバマ氏が就任することになった。昨日が我ら夫婦の結婚40周年だったが、オバマ氏を支持していた妻が喜んでいたので、記念日当日に上京していて不在だったことの風あたりは少なかったようだ。