効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

富士電機と風力発電

富士電機バイステクノロジー風力発電システムに注目した大容量パワー半導体を投入するようです。発売するのは絶縁ゲート・バイポーラー・トランジスタIGBT)で、電子回路上の電流を流したり止めたりするスイッチング素子の一種で、これから増大する風力発電インバーターやその出力変動を安定化させる設備に利用が進むと想定してのことでしょう。対応電流容量は600〜3600アンペア、価格は5万〜10万円、2009年に月5千個の販売が目標です。風力発電だけでなく、これからメガソーラーなど大規模太陽光発電設備の普及にも弾みが付くはずですから、この分野にも利用することができるシステムです。富士電機グループは高電圧大電流を扱う産業用IGBTの世界市場でシェア30%を持っているそうですから、これから世界で急拡大する自然エネルギーによる発電に的を絞った商品開発をしているのです。
同じ富士電機グループの富士電機システムズは、風力発電所から電力会社に送る送電量を安定化するシステムを開発しています。当然このIGBTを組み込んでいるはずです。風力発電所の3割程度に相当する能力の鉛蓄電池キャパシターを組み合わせて、充電と放電を迅速に栗かして出力変動を補正するのです。20分間の最大値と最小値を10%以下にすることができるそうで、蓄電システム1キロワットの初期投資額は5万円程度と報じられています。ここで注目すべきは蓄電池としてリチウムイオン電池ニッケル水素電池NAS電池を使わないで、昔からの鉛蓄電池を採用しているということです。コストは断然安くなる筈ですので、後は寿命と充放電の速度が課題となります。速度についてはキャパシターの充放電スピードの速さと組み合わせて対応していて、頻繁な変動はできるだけキャパシターで平滑化し、鉛蓄電池は一日単位の大規模変動の平滑化に利用すると記事では述べています。鉛蓄電池に比較すると、キャパシターは変動対応の回数が増えても寿命にそれほど影響しないからです。
数十基の風力発電機が集まっているウインドファームでは、各発電機の動き方が風によって異なり、発電量を補充しあうために、蓄電池容量は規模との対比で見ると引き下げることができるとしていますが、果たして電力会社がこの考え方に満足するかどうかは疑問です。厳しい安定化条件を付けられると対応に必要な電池容量は増えるかもしれません。
このような設備を入れると、変動するから系統に悪影響があるという理由で受け入れ量にキャップをかけている北海道や東北、九州などの電力会社もある程度は受入量を増やすでしょうが、基本的にいまの消極姿勢を変えることはないと思います。自然エネルギーの受け入れ義務量が極めて低いことも影響して、受け入れることが電力会社の得になる部分が少ないと思われているからです。この設備を入れた風力発電を電力会社自らが手がけるようになれば事情が変わってくるかも知れません。