効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

シドニー宣言

アジア太平洋経済協力会議APEC)は8日、オーストラリアのシドニーで首脳会議を開き、温暖化防止への決意を示した特別声明「シドニー宣言」を採択した。その声明では「2030年までに域内のエネルギー効率を05年比で25%以上向上させる」との目標を明記した。温暖化ガスの排出量そのものではなく、間接的にその目的に貢献するエネルギー消費の高効率化の目標に合意したのだが、効率化目標自体の定義が明確ではなく、一種の努力しますという気分の表現だとも言えなくはない。この他に、20年までに炭酸ガスを吸収する森林の面積を2000万ヘクタール以上増やすとの目標も示した。
数値目標が、米国や中国の参加しているこの会議で合意されたことは、精神規定にしろ重要な意味を持つと思う。これは米国や中国の国内事情を考えれば、何か前向きな姿勢を示さなければ国内からの反発が大きくなるということを考えれば、ある意味で落としどころであったといえる。ブッシュ政権は、イラクへの派兵についての強硬姿勢で次の大統領選挙で民主党に負ける可能性があるし、地球温暖化対応についても、州政府や企業レベルで自ら具体的目標を設定するなどの動きが見える中で、後ろ向きの姿勢ではさらに国民の反発がでるのは確実だった。中国については、地球温暖化だけでなく、大気汚染についても、有効な防止策を打ち出さなければ、北京オリンピックを控えて、大きな国内・国際問題になりかねない事情を抱えているだけに、義務のない数値目標であれば、極端に高いものでなければ受け入れざるを得なかっただろう。
数字は一人歩きすることがある。両国とも国内的にはこの数字をうまく利用して、国内施策の強化に向けた外圧とするだろう。実効性に疑問符がつけられるという報道もあるが、地球温暖化施策自体にどれほど実効性があるかに議論の余地があるだけに、政治的に意味を持つ数字が設定されたことは大きな進歩だと思う。
ところで、ブッシュ大統領がこの会議の冒頭の挨拶で参加者から失笑を買ったという記事が英字新聞にあった。APEC首脳会議主催国オーストラリアのハワード首相に、この意義ある"OPEC"会議に招待してくださって感謝すると言って会場の皆から笑われたのに慌てて、いや来年のOPEC会議に招待を受けているのだと冗談で交わそうとしたが、オーストラリアはOPECのメンバーではなかった。さらに、イラクの支援にオーストラリアが大きな貢献をしてくれたというつもりで、「オーストリア」の貢献と言ったそうだ。しかも、このスピーチを終わって退場するときに、間違った通路から退場したらしい。米国民はこのような大統領を持っているのだ。日本の首相がこのようなことをしたら大問題になっただろうが、米国ではどうだっただろうか。