効エネルギー日記

エネルギーの効率的利用を中心に、自分の考えを述べる。

モーダルシフト

ある荷物をどこかに運ぶ場合、手でぶら下げるか担いで運ぶ、自転車で運ぶ、鉄道で運ぶ、自動車で運ぶ、船で運ぶ、飛行機で運ぶなどいろいろな輸送方法がある。目的、費用、輸送に必要な時間などの要因を比較して、もっとも望ましい輸送手段が選ばれるわけだ。当然のことながら、事業用の輸送の場合には総合的に見たコストパーフォーマンスの良い方法が選択される。この比較要因の中に、エネルギー効率、言い換えれば輸送に必要な化石燃料から排出される炭酸ガスの量の大小が占める比率が大きくなってきた。目的達成が可能な範囲で、荷物が移動するときに消費される化石燃料が少なくなるような輸送方法を選択する企業が増えている。これがモーダルシフトと呼ばれているものだ。
先週31日の新聞で、引越しサービス会社が、首都圏と関西の間の家財輸送を、トラックから鉄道コンテナに切り替えると報道されている。トラックの利用を最寄り駅から顧客の間の短距離に限定することによって燃料費や人件費を抑えるとのことだが、この説明に、この切り替えによって、トラックの走行距離が580kmから50kmに短縮され、年間の炭酸ガス排出量が340トンから70トンに削減できると示されている。コストだけでなく、企業が環境改善に貢献するという企業の社会的責任(CSR)を具体的に示したものだといえる。
宅急便や一般輸送事業者でも同じようなモーダルシフトが検討され、実施に移されている件数も増えていると理解している。JR貨物のネットワークは全国をカバーしているから、極端なスピード配送が必要でなければ、時刻表どおりに動く貨物列車にコンテナー、場合によってはトラックごと載せて目的地近くの駅まで輸送すれば、輸送距離あたりのエネルギー効率が飛行機に次いで悪い自動車から、鉄道や船舶に切り替えるのは時代の要請だろう。輸送事業者の配達時間競争が激しいために、トラックドライバーが休みもとらずに長距離運転して事故を起こすことを考えれば、労働環境の大きな改善にもつながる。
宅急便が翌日に届くのが当たり前になっているが、エネルギー効率の観点からすると大きな問題である。配達時間指定までできる時代になっているが、このようなサービスを要求することが炭酸ガス排出量を増やすことにつながっているのは間違いない。1日や2日遅くなっても良いものは、鉄道便を指定できるようにすれば、日本全体の炭酸ガス排出量は大きく減ることになるだろう。我々一人一人が過剰なサービスを要求しないようにすることが必要なのだ。