生命学者、JT生命誌研究館館長中村桂子さんから聞いたお話の受け売りです。
今日は自分が客員をしている関西学院大学大学院総合政策研究科の、産官学一体の研究を目指したリサーチコンソーシアム第9回総会。その記念講演をされたのが中村さん。学生が一杯で溢れそうな会場だった。「生きる」を巡る話だったが、その中で具体例として説明されたイチジクとコバチの共生と共進化にへーと驚いた。
イチジクは実の内側に花が咲く。そこへ雌のコバチが入り込んで卵を産み付け、孵化した雌雄のコバチが中で動き回ることで受粉がなされてイチジクは子孫ができる。交尾した雌は、雄がイチジクの実の壁に開けた穴から外へ出て行き他のイチジクへ移り、残された雄はそのまま死んでしまうそうだ。イチジクには何種類もあるが、それぞれに固有のコバチが中に生きているとのこと。そのイチジクとコバチのDNAのゲノムを調べて行くと、イチジクもコバチも進化の出発点となる種に辿りつくことができる。しかも、この道程が両者について全く同じだという。その意味するところは、いままでの進化の過程でイチジクとコバチは一体として進化してきたということなのだ。片方だけが進化したのでは、どちらも滅びてしまう可能性があるのだろう。これを共生と共進化と表現された。イチジクもコバチもそれぞれ自分の子孫を残すべく最大限の努力をした結果、いろいろな種類に分かれるにあたって同じように進化していったのだ。
人間は何と共生、共進化しているのだろうか。